2018.03.30 07:52巴里組曲⑧谷川とミヒャンは、凱旋門から伸びるシャンゼリゼ大通りを歩いた。 日本とは比べ物にならないほど規模の大きい、そしてきらびやかなイルミネーションが通りの木々を飾っている。
2018.03.30 07:44巴里組曲⑦夕飯が一通り終わり、まだ8時過ぎだったこともあり、ミヒャンがどこかへ行きたいと言い出した。 「日本だと今、朝方の4時だよ。眠くないの?」 単純計算で2人はもう丸一日起きていることになる。着いた日は地理や治安の状況が分からないし、時差ボケや疲れを考慮してホテルへたどり着いたら夕食を摂って早めに休む、という安全策の考えで谷川は来ていたため、正直なところ横になって休みたかった。 「ここはパリです。時間はまだ8時デス。日本は忘れてください。」 どうやらミヒャンの返事は、素直にホテルに帰ることはできない様子だった。 仕方なしに彼が「地球の歩き方」の地図を広げて、地下鉄ですぐ行ける範囲に何があるか調べてみると凱旋門には地下鉄の「路線②」...
2018.03.30 03:40巴里組曲⑥2人して再び狭いエレベーターに乗り込み、フロント前へと降りる。持ってきたメモと地球の歩き方の地図を使って谷川がエクスペディアから予約したホテル「Bモンマルトル」の場所を確認する。さらに、ミヒャンのモバイルWi-Fiでグーグルナビを使い、さらに「place de clichy」駅はどっちかとフロントのおじさんに聞き、絶対に迷わないように動く。谷川の、無駄に迷いたくない、という性格が表れていた。反面、ミヒャンはどっちに行くのかも聞かずに谷川の後に続く。 時折ポツリと雨が額に当たるが、傘はいらない程度だった。 「日本より寒くないですね。ワタシ、とても寒いと思いました。」 雨のせいか湿気もあり、確かに思っていたほど寒くない。歩いていれば代謝のいい...
2018.03.30 02:28巴里組曲⑤ドライバーに送迎車まで案内されて空港内を歩いているとミヒャンが、 「あの、水を買いたいですケド、どこで買えるか聞けますか?」 と不安そうな表情を見せた。 自販機がそこらじゅうにあるのは世界一安全な国、日本くらいなもので、当然パリの空港にはほとんど見当たらなかった。ドライバーに聞くと、エレベーターでフロアを案内してくれ、さらにそれが硬貨しか使えない自販機だったため、彼がミヒャンの5ユーロ札を硬貨に崩してくれた。
2018.03.25 04:24巴里組曲④彼女はこのパリの旅を日本の旅行会社で全て手配してもらったようで、札幌から成田、成田からパリの航空券、おまけにホテルの予約、それにこのシャルル・ド・ゴール空港からそのホテルまでも送迎付きとのことだった。 「ホテルはどのあたりを取ったんですか?」 何気なく聞いたその質問から彼女の性格や旅の危険性を彼は気付くことになる。「あの、よくワカラナイんです。」 彼女が纏っている緊張感のない空気、それに、バッグのチャックが壊れている、と聞いたあたりからこの人は海外を一人旅をして大丈夫だろうかと、その危うさを谷川は感じ取っていた。 「よく分からないって、自分のホテルがどこかが?」 「・・・はい、全部頼んだので。」 そっかあ、と...
2018.03.21 05:50巴里組曲②彼は時々、登山という旅をする。 人気のある山よりも、誰もいない、名も知られていないような山に入り、そこの土や木々や空気などの雰囲気を噛みしめるように歩き、ひっそりと登山をするのが好きだ。時折、耳鳴りがするほどの静寂の中で立止まって木々の隙間から空を見上げてみると、あまりにも広大な空と小さすぎる自分の存在とが混在して、世界にはもう自分しか生き残っていないのではないかというような掴みどころのない寂しさと、そんな世界でもなんとか生きなければという使命感が同時に訪れる。そんな空想を味わうのが彼は好きだった。 そういった心境と状況下で偶然出会う登山者には言葉を交わす前から無条件で親しみを感じ、どこから来たのか、どこへ行くのかなどと話が始まれば、同じ「...
2018.03.20 13:19巴里組曲① 長期休みが取れる度に、東南アジアの各国の遺跡群、そして混沌の国インドを巡ってきた。 それらの冒険の旅の終着として、最後にピラミッドをはじめとするエジプトの遺跡群を見て完結させてやろうと考えていた。 2017年11月、例によって「地球の歩き方 エジプト」最新版と「るるぶ エジプト」を近所の図書館で借り、行きたい都市や治安情報、あるいは航空券やホテルの値段などの下調べを開始し、許された日程でどのように都市間移動や観光をするのかを練った。 しかし、 調べて分かったこと。 エジプトの観光にはタクシーが主流らしく、そのタクシーの料金交渉がとても面倒らしいのだ。 大衆ガイドブック「るるぶ」にさえ、現地の相場などあってないようなものです、と...