ゲストハウス「ザ パッカー ロッジ」に到着してベッドに寝転がり、最初の宿に辿り着いた安堵感を感じてくると、腹が減っていることに気付いた。
夕飯を食いに、受付で説明してもらった地図をみながらすぐ近くの定食屋へ行ってみることにした。
店の中を覗いてみると、カウンターのガラスケースに大盛りでいくつも何か料理が盛られている。
きっと好きな物を指さして注文するタイプだろう。けれどもうまそうな、あるいは食べたいような料理がない。
そうだ、オレは「ナシゴレン」が食べたかったのだ。
インドネシアのチャーハンとでも言おうか。昔、もう潰れてしまったが「too cute!」という居酒屋レストランがあって、世界各国の料理を食うことができた。
チャーハンの好きなオレは、インドネシアの米料理「ナシゴレン」を好んで食べたものだった。
バスが走っている大通りへ出て、それを探すことにした。
初めて来た土地で、しかも夜、疲れた体を引きずるようにして歩き、思考や判断力も弱っている中で長時間ウロツキ回るのは懸命ではない。受付で教えてもらったコンビニまで行って何もなければそこで適当にお菓子とカップヌードルでも買って宿で食べてもいい。
コンビニの前まで来るとなにやら屋台が出ていて、おやじさんが僅かなスペースの厨房で中華鍋を振っている。その屋台の周囲には粗雑なプラスチックのテーブルと椅子が並べられていて、いかにも東南アジアらしい即席食堂だ。
何組かの客が同じような焼き飯を食べていた。見た目はナシゴレンっぽい。オレは咄嗟におやじさんに声を掛け、中華鍋の焼き飯を指さしてからさらに「1」と人差し指を立てた。
おやじさんが険しい顔つきで中華鍋を振りながら頷く。どうやら無事に注文できたようだ。
空いている席に座って待つこと数分。おやじさんが無言で料理をオレのテーブルに置いた。やはりナシゴレンだ。一口食べる。僅かな酸味とほんのりとした辛さが混ざり、まさにインドネシアチャーハン。空いた腹にしみ入るような旨さだ。
オレはそれを夢中で口にかけこみながらも、さきほど、斜め向かいのテーブルに腰を掛けた日本人らしき男性の視線に気付いていた
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