クソ野郎のジャワ島横断記③

 マンガドゥア行きのバスが、夜のジャカルタの、決して良好とは言えない道路を飛ばして走る。シートベルトなどもちろんない。走り始めて10分ほどすると、係の男が料金を回収しにきた。


確か日本円で200円くらいだった気がする。


支払いをすると、チケットをくれた。


ついでに「コタ(駅)」と伝えた。

 

海外でのバス移動はとにかく運転手に降りる場所を伝えておく。そうすればそこに着いた時に教えてくれる可能性が高い。


渋滞がひどいと聞いてはいたが順調に進んでいるようだ。


降りる場所を伝えはしたが、本当にコタ駅方面へ進んでいるのか心配になる。 
現地SIMカードを入れたばかりのiphoneでグーグルマップを起動させてみる。
大丈夫だ。方面は合っている。


暗くてよく見えはしないが、やはり東南アジア独特の、粗末なコンクリートで雑に作られた家々が見える。


首都ではあるが、日本のようにLED灯はまだ普及していないのかオレンジ電球が目立ち、それが、怪しげな雰囲気を匂わせる。


旅が始まった高揚感と冷静に向き合いつつ、バスに揺られた。
約50分後、コタ駅が近づいてきた。 


駅前の通りの、オレンジ灯の光で照らされた歩道を多くの人々が行き交っているのが車窓越しに見える。



 歩道にはゴミやらホコリやら欠けた歩道のブロックの破片やらが散乱し、そのほんの僅かな隙間を埋めるように無数のバイクタクシーが客待ちをしていた。
それらがオレンジの色の光で深い陰影を伴って浮かび上がり、あたかも別の惑星にでもきてしまったような気さえする。一瞬ひるみ、バスを降りるのをためらうような場所だ。


その時、


「コタ!」


と係の男の叫びがバス内に響き、すぐに停車した。躊躇している場合ではない。降りなければ。


 バックパックを背負い、まるで戦場の第一線にでも放り出される心持ちでオレはバスの外へ出た。


 まずはまっすぐ歩く。キョロキョロしてはいけない。オレが外国人というのは明らかではあるが、不慣れな旅行者、という振る舞いをしていればスリや詐欺の格好の的になってしまう。迷っているふりなど見せずとにかく足を動かす。


このあたりの地図は頭に入れてきた。まずは「トランスジャカルタ」という路線バスに乗るために停留所へ向かう。


このトランスジャカルタは専用道路が作られ、渋滞に囚われることなく進むことができ、市民の足となっているそうだ。ホームもあり、言うなれば路面電車。


「ハロー。タクシー?! タクシー?!」


というオレへの掛け声を何度となく片手を上げて柔らかく断りながら、歩道を歩く。


鉄道のコタ駅のすぐ目の前だと頭に入れてきて、大通りの中央分離帯に見つけられたが、乗り場へどうやって行くのか分からない。


見えているそれの周りをぐるぐる歩いて入り口を探す。どうやら一度、地下道へ入ってそこから中央分離帯へ行くようだ。


地下道の両端にはキオスクのような小さな店が立ち並んでいた。鉄道コタ駅前ということでバスの乗降者も多く商売が成り立つのだろう。


地下から今度は地上の停留所へとスロープを行くらしい。


階段を上がると、乗り場がある。JRのsuicaようにここもカード式切符となっていて、窓口にてチャージ済みのカードを購入。


改札にタッチして入る。


このトランスジャカルタの「コタ駅」は始発、終点駅なのでとにかくやってきたバスに乗れば次の駅に行ける。


バス車内は日本と差ほど変わらない。皆、静かに乗っている。

 
1駅、約1.5キロ。散策がてら歩けない距離ではないが、明日からの移動のためにもバス乗車は経験しておいたかったし、八時間近いフライトで体も疲れている。


景色は、さすが首都、そしてメイン通り。大きな建物ばかりが立ち並び、明るい。


降りて、今夜宿泊するゲストハウス「パッカーズロッジ」へ向かう。
駅から伸びる歩道橋を歩く。


周囲に誰もいないことを確認してからiphoneを取り出し、グーグルマップで位置を確認する。


大丈夫だ。もう近くだ。事前にグーグルで見ておいた現地写真の通り、看板を見つけて路地に入り、50mほど行くとそのゲストハウスがあった。入り口ではどうやら靴を脱ぐようだ。


入り口ではどうやら靴を脱ぐようだ。


受付に行くと、愛想の良い女性が対応してくれた。エクスペディアからの予約はちゃんと入っていたようで一安心。   


 無事、部屋へと案内される。人のいびきが超苦手なオレはゲストハウスであろうと決してドミトリーなどではなく個室を取るのだ。


 受付の女性がオレを部屋に案内しながら言う。


「あなた、英語話せるのね。今、一週間くらい泊まってる日本人がいるんだけど、英語話せないのよ。説明に困るわ。」


 この女性、ずいぶん流暢に英語を話す。この宿がそういった人をきちんと雇っといるのだろう。


「ええ、ほとんどの日本人は英語を話さないので。」


 オレはそう返事しながらも、ここに日本人が滞在している情報を得る。しかもゲストハウスに一週間ということはバックパッカーである。もしかしたら顔を合わすこともあるかもしれない。


 オレの部屋はどうやら3階のようで螺旋階段を上がっていく。
 
 その女性は案内した部屋を、丁寧にシャワーだの使い方を教えてくれた。
 成田を出発して、すでに11時間が経過していた。なんとかここまでたどり着いた、という一つの達成感が蓄積していた疲労共に溢れ、オレはバックパックをベッドに放り、自分もそこに寝転がった。


現在22時。日本は今何時だろうか。インドネシアはマイナス2時間だから、日本はもう夜中の12時か。


 日本では色々あった。それらを担う思考を全て一時停止してここにやってきたつもりであったが、どうやらそういうわけにはいかないようだ。


目を閉じると、浮かんでくる記憶の情景があり、オレはそれらを反芻しながらしばし体を休めた。


おかやんの「とりあえず何でもひとりでやってみる」ブログ。

やりたい事は悩みながらなんでもやってみる。結果的に楽しんでる!また、何かに特化して書いているわけではありません。 書きたいことをごった混ぜにしてネタをブチ混んで書いていますhttps://www.instagram.com/the_unending_world/?hl=ja

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