ツタンカーメンの財宝を見終え、ふと時計の針がもうすぐ午後四時を指そうとしていることに気がついた。
思いのほか早く午後の予定を片付けてしまったぼくは、これからの行動をどうしようか考えた。
カイロ博物館の広大なセンターホール、巨石の如きファラオ像の足元にある階段に腰を下ろし、「地球の歩き方」を手に取る。ページを繰り、明日の行程を考えるも、成田からの長いフライト、寝不足、そして今後続く旅路が頭をかすめる。
今日はこれ以上無理をせず、宿に戻り、ひとまず身体を休めることにしよう。
一日中歩き回って冒険したかったが、初日から疲れ果てることはない。
ただ、またタクシーを呼んでピラミッド方面へ帰るのではおもしろくない。バックパッカーたるもの、地元の人々に混じって地域の安価の移動手段を使わねば。
よって地下鉄やミニバスを乗り継いでピラミッドのあるギザ駅へ戻ろうと考えた。
チケットは窓口で人から買う。駅名を伝えて料金を払うと、窓口のおばさんが青いチケットを出してくれた。約25円。
日本と似た改札にそれを入れ、構内へ。
いくつかの駅を過ぎ、予定のギザ駅へ到着。
欧米人もいない。駅前は、日本の駅前通り商店街かのように様々な店が、といってもリヤカーに服や野菜や果物、魚を乗っけただけの即席露店が並び、賑わっていた。
バス、というか、ミニバス、いや、ハイエースだ。
背後から運転手の方をトントンと叩き、スッと差し出す。彼は片手でいくらあるのかを確認するとそれをしまった。
降りたのはぼく1人。
街中を走るアトラクションにでも乗ったような気分だった。
ここは評価通り、とても綺麗で設備も十分だった。
オーナーの奥さんが日本人とのことで日本人客も多い。
さっそく玄関で日本人の20代らしき男性2人が何やら靴をペットボトルの水をかけて洗っている。
宿で1時間ほど一休みし、夕飯を探しに出かけることにした。
「コシャリ」と呼ばれるエジプトのソウルフードがあるらしい。
さすがに夜の7時近くになるとチケット売り場には人はなく、ケンタッキーもすでに閉店していた。
「英語のメニューはありますか?」
と聞くと、アラブ語メニューの裏面にあった。
コシャリのMサイズを注文。50EGP。約200円。
それとペプシ。合計250円くらい。
5分ほどで、コシャリというやつが運ばれてきた。
全くもって不衛生なスプーンを一応服で拭き、少しばかりきれいになった気持ちで、コシャリを一口。
これは苦手な味だ。
食べたことのない味。酢が強い醤油味にコーンフレーク的な食感の米を入れてある感じ。
しかし、一口、二口で残す訳にもいかない。
テーブルに置いてあった味変用のソースをかけて、なんとか食べる。
ペプシで流し込む。
「グッ!」
と言ってしまう。
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