では、中編のスタートです。
雪渓に足を踏み入れ登っていく。アイゼン(登山靴につける刃)はおろか、チェーンスパイクも持ってきていない。
万が一転んだら、止まらずに滑落していき、雪解け水で激流の川へ・・・、
ドボンだ・・・。
この辺りで、老夫婦が150mほど下に見えた。 彼らも登山道を見失って右往左往していたようだ。
Kさんがストックを振って合図をする。伝わったようだ。しかし、大丈夫だろうか。
老夫婦にこの雪渓の斜面が登れるとは思えなかった。
人の心配もしたいところだが、自分が滑るわけにもいかない。
方向も分からず動き回るよりは、まずはKさんが登山道を確認できるまで立ち止まろう、と写真に写す。
それがこちらだ。
赤い丸にKさんがいます。
なんとなく草木がきれているので、登山道か? と曖昧に見ていたがどうやら本当にそのようだ。そのすぐ右側では雪解け水が滝となって轟音を立てて落ちてきている。
Kさんが撮ったオレの写真。その下に老夫婦(赤丸)が登ってきているが、これが最後の彼らの姿となった・・・。
うまく雪渓から逃れたオレとKさんだったが、林を抜けたらまた雪渓が目の前に現れた。
見たこともない亀裂があり、その下を川が流れている。
まるで洞窟のようにぽっかりと口を開けていた。
この岩場を行くが、落ちたらここに飲み込まれると思うとゾッとする。。。
岩場を行くが、積雪で行き止まり。
またしても雪渓を歩くしかなくなる。Kさんが方向を指している図。
比較的緩やかな斜面になり、一安心するオレとKさん。
登るしかない。
GPSで位置を確認する。登山道は、左方向へと谷の雪渓で進んでいるが、とてもノーマル登山靴では登れそうにない。
仕方なく、雪のない右手の谷へ進んで、なんとか合流を目指すことにした。
背後を振り返ると、雪のない、日の当たる山が見えた。この時点でまだ朝7:15分。
それでも出発して2時間経過している。
この沢を渡り、ロッククライミングコースへ・・・。
右手へ進んだはいいが、崩壊、崩落、下手に石を掴んだり、踏んだりすれば転げ落ちる。
この崩壊、崩落の岩の斜面をロッククライミングしていく。オレはもう戦意喪失状態。
次の一歩、あるいは手をどこの岩にひっかければいいのか、この岩をつかんで本当に大丈夫なのか、ほとんど運だけで登る。
時折、Kさんが踏み外した岩が転がってくる。。。頭に当たればやばいぜ・・・・。
オレは登山ということはもはやどうでもよくなっていて、どうすれば無事に帰れるか考えていた。
そしてどうしてこっちのコースに来てしまったのか、激しく後悔していた。
下は見ないほうがいいのに、下を見てしまう。転がれば大怪我か死ぬか。。。
戻ることも困難だったけれど、怪我や命には代えられない、オレはKさんに引き返すことも提案する。
すでに登山道からは反れている。方向が違うため合流もおそらくできない。
できたとしても再び雪渓。
とても登頂はできそうにない。
山はまた次の週にでも来ることができる。けれど、怪我をしてしまえばそうはいかない。
パーセンテージとして、そんなリスクを背負ってまで登ることはない。
大人になってからの意地は、それと相当の危険が伴う。
けれど、
今回も、
そんなものを全部無視して、
登る。(笑)
Kさんが言う。
「ここまで来たら、一般コースへ合流したほうが近いな」
GPSを見る。 登山道からはもう離れてしまっている。
けれど、確かに一般コースのカーブが近い場所があった。
近いと言っても壁のような斜面を50m。
現在地こちら。
この何もない場所をよじ登って、「六合目展望台」へ出る、という案。
オレの好きなバンド、uverworldのボーカルが言っていた。
「新しい時代に足跡を付ける、オレたちがuverworld !」
そういう意味では、
「新しい登山道に足跡を付ける、オレたちがクソ野郎 !」
ということが、
成り立たないでもない。
目の前にあるのは崩壊した岩の壁。
そしてそれをよじ登った先は、残雪+ヤブ林の急斜面。
一般登山道へ合流、という目的が決まって以来、もうどこをどう登ったのか、よく覚えていない。
必死とはこういうことをいうのだろう。
泥で滑って、登れない。登ろうと片手を離せば、ズルズル落ちていく。
登れなければ、下にも下りれない。
なんとか、木の枝に掴まれれば・・・・
先を行くKさん。
泥の斜面で、今にも剥がれそうな岩につかまっていてもいつ落ちるか分からない。
ふと横を見ると、掴まれそうな枝がある。
横移動を開始。
木の枝に掴まれるところまで来た。
登山道でなければ、人が立ち入るところでもない。見たことがあるような山菜があったが、気にせずかき分けてよじ登る。
と、その時、奥の林の向こうから何か聞こえる。
「Kさん、人の声が聞こえます!!」
「本当だ。もうすぐ合流だ!」
森の奥深くから聞こえた声。
人の声を聞いて、これほど嬉しかったことはない(笑)
もうすぐとは言っても、そこから10分は泥の壁を登ったと思う。
声が聞こえるのに合流しない。
まだか・・・、まだか、、、、
「見えた!!!」
Kさんのそんな声が上のほうから聞こえた。
出た・・・・、生きて帰れたんだ!!!(笑)
「ぐふぁ!!!」
森の、しかも崖の中から突如として現れ、登山道に勢いよく倒れ込んだオレたち。
そこにたまたまいた登山者のおじさんが、
「だ・・・大丈夫ですか?!」
と、神妙に聞いてくる。
「大丈夫のわけねーだろコノヤロー!!
わしゃ死にかけたわ、怒るでしかし。」
と、やすし師匠なら言っていただろう。
登山道に倒れ込むKさん。
とにかく、
タイトルにある通り、登山道を見失った後に死に物狂いで探して戻れると、人はどれくらいホッとするのかを検証した結果、
もう、
めちゃくちゃ嬉しい
ことが判明した。。。。
そして
もう二度と検証したくない登山であった。
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