北アルプス3190m峰 奥穂高岳登山① かまいたちの夜編

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早朝、オレは上高地へと向かう沢渡バスターミナルに隣接する駐車場にいた。  


地元のコンビニで朝飯用にと買ってきておいたおにぎりを食べていると、一段下の駐車場に男女2名ずつの登山者が準備しているのが見下ろせた。彼らまで距離があるので定かではないがアラサーといったところだろうか。


心理学によると、男性というのは、男女が並んで話しているのを見るだけで仲が良さそうに見え、あるいはよからぬ関係だと勝手に認識してしまうのだとか。  



山はなあ、そういところじゃねんだよ余所でしろバカヤロッ。  



今日はタケシのモノマネが冴える。  こんな時、ピコピコハンマーがあればおもしろいだろうに。次回からザックに外付けして持っていくことにしよう。ただでさえ重い、テント泊装備のザックにそんな物へつけていれば、こいつはなんなんだ、と奇異の視線を独り占めだ。   

 



ところで上高地はマイカー規制を実施しているため、バスに乗って行く必要がある。8月の金曜日であったため、ターミナルへ向かっても数名しかいない。準備に時間がかかってしまったため30分おきに発車しているバスがちょうど出てしまい、ターミナルで時間をつぶすことになった。



一大観光地の玄関口は、穏やかな音楽が流れ、そして自然や環境に関する展示物が並べられている雰囲気はまるで自然史博物館のよう。また近年は外国人観光客の増加もあり、英語表記も多くクールな印象であった。    







やってきた大型バスにはオレを含めてたった10名ほど。  狭い山道を30キロ程度で進んでいく。時折、復路のバスとすれ違うが、普通車でも難しい道幅でなぜかすれ違うことができる。そんな運転技術に関心をしつつ、大正池を過ぎ、帝国ホテルを過ぎ、30分ほどで上高地バスターミナルに到着する。  



時刻は7時20分。平日でなければすでにかなりの賑わいであろう。ここから6時間かけて涸沢カールと呼ばれる、氷河によって削られた渓谷まで登っていく。最初の2時間は明神館、徳沢ロッジ、横尾山荘まで2時間の平地歩き。横尾山荘前の横尾大橋を渡ると本格的登山道となっていく。  



2時間の歩きとはいえ15キロ近いテント泊装備のザックを背に歩くわけだからしんどくないわけではない。  山荘に泊まる軽装備の登山者に軽快に抜かされていくたびに、悔しい気持ちとテント泊装備をしているという優越感が入り交じる。  



「明神館」





「徳沢ロッジ」






「横尾山荘」




7月末になってようやく開けた梅雨を待っての登山であったため、出来上がっていない体でここまで来た。そのため残り4時間の上りは、登山というよりは体力勝負のサバイバルとなった。かといって日頃から多少マラソンにてトレーニングはしているため持久力はある。腹も出ていない。  



登山道で、屍同然に倒れこんで瀕死状態、いや、たぶん休憩を取っているおじさんたちを何人も見殺しにして4時間、オレは涸沢カールにあるテント場に到着した。    






登山を始めて登山雑誌やサイトを見るようになった。この場所を知って以来、いつかは行ってみたいと思っていた。登山好きであるならば誰もがそう思うここは、奥穂高岳の直下にあり、秋の紅葉は日本一とうたわれる。当然その時期は全国が人が押し寄せるそうだ。    





さっそくテントを張る場所を探す。イビキや物音が大の苦手なオレは、とにかく他人のテントから離れた場所を優先したい。テントから渓谷を望むことができる眺望の良いポイントも捨てがたかったが、就寝時の快適さは捨てられない。オレはテントが密集する上の方を避け、人気のあまりない、しかも雨風を防げる小さな木々の茂みの脇にテントを設置することにした。  




涸沢カールには2つの山小屋がある。涸沢ヒュッテと涸沢小屋だ。名前が似ているので初めて来た身としては計画段階でどっちがどっちが分からなくなったもんだ。  



テント幕営地を管理している涸沢ヒュッテへ行き、山小屋内を見学。山小屋に泊まったことのないオレはどこの山小屋も興味を惹かれ、いつか、空いている時期に泊まってみたいと思いを馳せる。  



テント設置や山小屋見学をしていたら到着から一時間が経過していた。  



時刻はすでに3時近いので、遅い昼飯にする。  小屋でコーラを購入。400円。コンビニで買えば150円。標高2310mの地点で+250円で飲めると思うと安い。パリの観光地で買えば500円はする。  


持ってきたペヤングがお昼。  


お湯を沸かし、注いだところで雨が降り出した。先程から遠くでゴロゴロと雷の音が聞こえていたので怪しいとは思っていたが、これでは涸沢カールの絶景を見ながら外で食べられない。  



その後は、本格的な雷雨となり、おとなしくテント内で過ごすことを余儀なくされる。時折、テントの小窓から外を覗くと到着したばかりの登山者がカッパを着て慌ててテント場に駆け込んでいた。  ペヤングとコーラでお腹を満たし、寝袋の上に横になっていると、ようやくそこでひどく疲れていたことに気付く。



雷も雨も嫌いではない。目をつむり、それらの心地よい音に身を任せていると、いつしか寝てしまっていた。  目覚めたのは5時前、2時間近く寝てしまったようだ。音はしない。雨はやんでいるようだ。



トイレに行くためにテントを抜け出し、小屋へ向かう。他の登山者たちもようやくやんだ雨に、カタツムリかのようにテントから次々と顔をのぞかせた。 


「さっきの雨、やばかったわ。テント飛ぶかと思ったわ〜。浸水したわ。」  

通路を歩いているとそんな声が耳に入った。カールに近い場所に張った人たちは雨風を防ぐものが何もないので、あたりがひどかったようだ。


加えてそんな時はテント床下の雨水対策をしっかりしておかないと、地面を這う雨がテント下に流れ込んでしまうのだ。  


素泊まりの客たちなのか、ヒュッテの大きなテラスでは数人のパーティがバーナーで鍋を作っているところであった。ヒュッテ内では、夕食の時間が始まっていて、スタッフたちが忙しなく動き回っていた。  





客室を覗いてみると、二段ベッドのように下段と上段に別れて小部屋が並び、そこに5〜6人ずつ雑魚寝をするようだ。イビキや他人の物音が直接聞こえ、あるいは肌さえ触れてしまうが、暖房がついた小屋内は天気の影響も受けず快適さも感じられた。  





暗くなる前に夕食にする。  

アルファ米の白飯とインスタントカレー。アルファ米は決して美味しい味ではないが目の前に聳える奥穂高岳を見ながらの食事は格別だ。  



その日は、雨が降ったり止んだりで、食事の後もテントに当たる雨の音を聞きながら早めの就寝とした。  



夜中。

トイレに行こうとテントを出てオレは小屋へと向かった。その後に訪れる事件も知らずに。     


つづく。




おかやんの「とりあえず何でもひとりでやってみる」ブログ。

やりたい事は悩みながらなんでもやってみる。結果的に楽しんでる!また、何かに特化して書いているわけではありません。 書きたいことをごった混ぜにしてネタをブチ混んで書いていますhttps://www.instagram.com/the_unending_world/?hl=ja

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