新世界紀行 エジプトの旅34 最終日
少しだけ、違う。
嘘のない、静かな時間だった。
思春期の頃のただ燃えるだけの恋愛が過ぎ去ったあとに残る静けさのような、
生きている。
ぼくは、生きている。
ただそれだけのことが、こんなにも強く、胸を打った。
もうすぐ、夢から目覚める。
でも、きっとこの夢は、ぼくの中で永遠に終わらない。
ふとした偶然で時間を共有する。
その不思議な関係性が、この風景をいっそう美しく見せていた。
ぼくたちは今、ピラミッドという名の奇跡の場所にいる。
世界の果てのような場所で、こんなにも現実が遠い。
この数日間、ずっと思考も体もふわふわと浮かんでいた。
地面を歩いているはずなのに、
風に乗って漂っているような感覚だった。
日々の生活では、現実味が強すぎて身も心も硬くなっている。
このふわふわした夢のような感覚は、
いったい、いつまで続いてくれるのだろうか。
クフ王、そしてカフラー王のピラミッドを見上げながら、
ぼくらはただ、歩いた。
すごい、とKさんが言うたびに、
ぼくの中の何かが、すこしずつ満たされていった。
旅のすべてを、見届けた気がしていた。
Kさんともピラミッドとも、お別れのときが来た。
カフラー王のピラミッドの袂。
砂にまみれた古代の石が、静かに見守る中で、声をかけあった。
「じゃあ、また日本で」
Kさんのその言葉は、まるで上野とか、渋谷とか、東京のどこかでの、
けれど、ここはエジプトだった。
五千年の時間が静かに横たわる、ピラミッドの前だった。
そのすぐ後ろに、カフラー王とメンカウラーのピラミッドが、
そして、その遥か向こうに広がる空の青――
どこまでも澄んだ、あの青だけが、
おかやんのバックパッカー旅ブログ。
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