ウズベキスタンの旅㉚ 郊外から歩いて帰る


大通りを歩いていると、昔日本にあった「ドライブイン」的な見た目の簡素な複合施設があった。
どうやらATMがあるようなので、国際キャッシングで現金を下ろすことにした。

ちゃんと英語表記に変更もできる。
ただ、その時の私はなんとか現金を引き出さねば、という焦りと、郊外を身一つで歩いている僅かな不安があったようで、クレジットカードを挿入して、暗証番号を打ち間違えるか、もしくは何らかの操作を誤ってしまったのだ。


通信中、という画面からいっこうに画面が変化せず、「これはカードを飲まれてしまったかも!」という強烈な不安に襲われあわてて「キャンセル」ボタンを押す。


しかし、数秒か10数秒か、とにかくそれさえも強烈な不安の元では長く感じられた。


無事にクレジットカードが出てきた時には思わず、イエス!!とガッツポーズをしてしまった。現金を手にしたわけでもないのに。
海外での経験にて、あれほど強烈な不安と焦りを感じたのはこれが初めてだった。



仕方ない、街中の、警備員が常駐しているATMへ行こう。帰れるバス代くらいは持っているのだ。

ちょうどこの複合施設にバスターミナルがあり、いくつかの種類のバスが停車していた。


街中に確実に向かうバス番号を確認し、乗り込む。良かった。ドア付近の席ならまだ空いている。



座ろうとして、バス内の雰囲気に気付く。
ほぼ全ての乗客が私を見ているのだ。


珍しい、、、のかな?東洋人は。



客層も明らかに観光街とは違った。日本でもそうだが、田舎へ行けば行くほどおしゃれ感はなくなり、ラフというべきか、田舎風になる。



なんとなく気まずい空気の中、ザックを背中から下ろして膝の上に置く。
そのうち、買い物を終えた客やら学生風の若者やらが乗り込んできて、車内はぎゅうぎゅうになり、それを合図にしてバスは出発した。



料金は一律で、どこまで乗っても同じ金額。60円くらい。しっかり前方に記載がある。そしてその現金ならちゃんと持っている。もちろんそれを払えばほぼ文無しになるが、ATMへ行けば全く問題ない。



できればもっとも観光街に近いバス停で降りたいが、それもどこだか分からず難しいので紙の地図に加え、GPSで位置を常に確認していた。
そんなことをしていると視線を感じる。



ふと私も視線を向けると席のすぐ隣に立っている女の子、高校生くらいだろうか、その子が笑顔で私を見ている。すると、英語で「どこから来たの?」と聞いてくるではないか。


その子、どうやら、バス内を代表して外国人である私に話しかけてくれたようで、私が


「日本だよ。」


と答えると、何故かそれを聞いていたバス内の他の乗客らが「ジャパーン!」と盛り上がった。



そしてその子はとても恥ずかしそうに顔を赤らめた。これは良いきっかけだ、どこで降りたら良いか聞くことにしようと思い、地図を見せ、「このあたりで降りたいんだけど」と伝えるとこれまた私の地図を見ようと周囲の乗客らが私のほうへ押し寄せた。



その中の一人のおばさんがウズベク語で私に話しかけてきて、ポケトークを使って会話したところ、「近くになったら教える」とのことで、私の「どこで降りる」騒ぎはいったん決着した。
改めて女の子に「どうして英語を話せるの?」と聞くと「学校で習っている」と答えた。


もしかしたら学校内でも頭の良い子なのかもしれない。


バス停の度に数人の乗り降りはあったが通路まで満員は続き、そろそろ降り場が近づいてきたろうと準備していた矢先に、おばさんが「ここで降りなさい!」と突然私に知らせ、まだ少し先かと思っていた私を驚かせた。


どうやら今までで一番多くの人が降りるようでバス内の乗客が動き始める。
「バス代は誰に渡せば?!」



女の子に聞くと彼女は、降りようとしているある青年を指さした。彼は確かにターミナルから乗っている。私は彼がバス賃の徴収係だと思って追いかけた。


「ありがとう!」


私は叫ぶように女の子に笑顔で伝えて慌てて降りた。


外で立っていた青年に金を渡すとなぜかそれを受け取ってくれない。再びポケトーク。

青年が笑顔で言う。


「バス代はぼくが払いました。あなたが払う必要はありません。」


「?!」


驚いているうちにバスが発車する。


女の子とおばさんが手を振ってくれていた。私も振り返す。
この青年はバス賃の徴収係ではなく、一般の乗客で、おそらく私と女の子の話をバス内で聞いていて私の分を払って、いや、おごってくれたようなのだ。だからあの女の子はこの青年を指さしたのか。


「どこへ行きますか?」


私はとくに行く当てはなかったがまずはATMと思い、観光の中心部である池「ラビハウズ」と答えた。


「それならこっちですよ。」


青年と一緒に横断歩道を渡ったところで、彼は、
「では、ぼくはこっちへ行きます。ここを行けばラビハウズに着きます。」
と言って手を振って去っていった。


バスを降りるところからの今までの一連の流れがあまりにも早く、出来事の理解が追いつかないまま私はまた、ぽつんとひとりになっていた。

神様に感謝するべく出会いをまた一つ、私はここで頂いた。



おかやんの「とりあえず何でもひとりでやってみる」ブログ。

やりたい事は悩みながらなんでもやってみる。結果的に楽しんでる!また、何かに特化して書いているわけではありません。 書きたいことをごった混ぜにしてネタをブチ混んで書いていますhttps://www.instagram.com/the_unending_world/?hl=ja

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