サマルカンドでは「アミール ホステル」というゲストハウスを二泊取っていた。宿を変えると荷物の移動が大変だったり、土地勘が定着しないから。
入り口のカーテンが閉まり、電気も消えてはいるが、ドアのカギは開いていた。
ガチャリと開けて中に入る。
小さな受付があり、さらにその奥からは光が漏れていたので誰かはいるようだ。
ウズベク語の「こんばんは」が分からなかったため、Helloと控えめに呼ぶと
何やら女性の返事が聞こえ、しばらくすると中年の、しかしおばさんと呼ぶには悪い綺麗な
方が出てきた。
「遅かったわね。心配していたのよ。」
とても流暢なアメリカ英語で驚いた。
「遅くなりました。電車が8時半頃に駅に着いて、そこからタクシーで来ました。」
「無事で良かったわ。さっそくチェックインの手続きするわね」
私はパスポートを手渡した。ウズベキスタンでは、外国人は宿泊先にて滞在証をもらう必要があり、宿にもその日の客の登録が義務付けられている。
簡易地図をくれ、ここが〜で、ここが〜よ、と教えてくれた。ついでにどこか開いている売店はないかと聞き、少し先の大きな交差点にあると教えてくれた。なにせ、タクシーでここまで来るのに分かったが時間も遅く、年末ということもあり、どこもシャッターなのだ。
「支払いはスムでいいかしら」
実は、私は宿代を支払えるほどの現地通貨をその時持っておらず、日本円、もしくはアメリカドルを換金しなけらばならなかった。
「アメリカドルでは支払えませんか?」
聞いてはみるがウズベキスタンでアメリカドルで支払いを受け取ることは禁止されているらしいとは本で読んでいた。
「うーん、夫に聞いてみるわ。今夜、公園でイベントがあって娘と今でかけているの。」
帰ってきてから聞いてみるから、先に部屋を案内するわ。」
受付の脇のドアを入っていくと、一般の家庭のキッチンがある。
「こっちに庭があるの」
キッチンの脇のドアを開けて見せてもらうと、洗濯物干しや物置が暗がりに見えた。
「部屋は2階ね」
上がっていくと、左手にシャワー室、短い廊下にドミトリー(6人相部屋)とさらに廊下の奥に個室があった。
「ここね。カギはこれ。じゃあ、夫が帰ってきたらまた呼ぶわね」
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