クソ野郎が旅するベトナム④ 古都フエでの出会い。そして運転手ドーさん。


ベトナム中部、古都フエ。  


ベトナム最後のグエン王朝があった場所だ。


ベトナム戦争時には激戦区にもなったとのことで、王宮の建物の多くが破壊されてしまった。


現在は修復工事も少しづつ進み、ベトナムで最初の世界遺産となっている。


 タクシーの車窓から眺めた限り、フエの街にダナンやホイアンのような喧噪はなく、街は穏やかな雰囲気。田舎街という印象だった。  


①フエ旧王宮。  

ここは中国北京の紫禁城も模して作られたとのこと。遠くからでも、巨大なベトナム国旗がはためいているのが見えた。



 王宮の門が見える離れに木陰があり、ちょうど日陰に車を停められる。ここで待ってます、と言うタクシー運転手のドーさん。ツアーと違って、自由に時間を使えるのが嬉しい。  

門へと歩く。 天気は快晴、日本よりも太陽が近いように感じるほど暑い。湿気も高く、すぐにのどが渇く。  


広大な敷地なのに、その暑いせいか観光客の姿はほとんど見られない。そういえばダナンもそうだった。昼間はあまり人が出歩いていない。 入場門へ行き、料金を払う。博物館チケットと博物館へのカート乗車券がセットになっていた。  


王宮建物は中国建築の影響をかなり受けていて、ホントに見た目は中国文化。  

犬のような、ネコのような四つ足の何かの像がある。  

日本の神社にある狛犬は、アジアをずっと経由してその姿と名前を変えながら日本へやってきたらしいが、ここには麒麟なのか、ライオンなのか、狛犬なのか、分からない怪物の像があちらこちらにある。  








王朝の宮殿とその前の広場。 どこかで見たような気がしたがすぐに思い出した。ドラゴンボールの天下一武道会の会場だ。

マンガで読んだあのままの姿がここにある。








 建物を抜け、奥へ歩いて行くと、芝生で整理され緑色がきれいな広場がある。 王宮は各区域で分けられているようで、区域ごとに長く高い塀に囲まれていた。けれどもその中に何か建物があるかといえば何もない。ベトナム戦争によって破壊され尽くされたのが伺える。

場所によっては、そのまま放置されたような瓦礫もある。 とにかく王宮とだけあって、敷地面積が広く、うだる暑さの中、歩くのがしんどい。 



一時間ほどかけて王宮内を見たあと、博物館へ向かってみる。  

行きカート乗り場へ行って、カートに寝転がっていたオッサンにチケットを見せる。門の外を指差した。あっちなのか、と思いそちらへ行く。が何もない。 

博物館へは歩いてもいけそうだとは思ったが、もう一度オッサンに聞いてみようと戻る。

にも欧米人がカートのおっさんに聞いているようだった。 

すると、オッサンは 「バレちゃしょうがねえな」 というような苦笑いで、カートに乗れ、と指差した。  おい、おっさん、ただ面倒だっただけだろ。


 カートでわずか2分たらずの距離だったけれど、歩いたらそれはそれできつい気温。

無事に博物館に着き、フエ王朝の展示品を見学。 

 すぐ近くの戦争博物館の外には、アメリカ軍が残していった戦車やら戦闘機やら機関銃が置いてある。 



 暑さで歩くのも思考もままならないので、ドーさんのタクシーの戻った。  

ドーさん、木陰のハンモックで昼寝中。   

近くにはリアカーのお店が来ていた。飲み物、お菓子、果物をおばあさんが売っていた。 そのおばあさんがオレに気付き、タクシーの客だと悟ってくれたのかドーさんを揺さぶり起こす。 

ドーさん、再び飛び起きすぐにタクシーに駆け寄ってきてくれた。 



②フエでのランチ、というかフォー。  

時刻はもう、1時を回っていた。

ベトナム語会話の本を取り出して、「もうご飯食べた?」と聞いてみる。ドーさんは首を細かく縦に振る。 続けて「お腹へった」と「レストラン」のところを指差して、発音してみた。

本当は地元の食堂がよかったが、そんな表現が見つけられない。 ドーさんが連れていってくれた場所は、たしかに「レストラン」。しかも、高級なやつ。 外国人向けのところに来てくれたんだろう。 


 中に入ると、昼時を過ぎていたせいか、客はおろか店員もいない。いくつもテーブルと椅子が並べられ、白く光るお皿とナプキンが三角にキレイに折られてテーブルにちょこんと乗っかっていた。 


 しばらく入り口で立っていると、厨房から女性スタッフが出てきた。英語が通じるようなので、まだ食べれますか? と聞くと何やら厨房へ確認しにいった。


おそらくツアーの団体客を受け入れているレストランなのだろう。 戻ってくるなり、大丈夫だが、出すまでに時間が30分以上かかるとのことだった。 メニューを見せてもらったが、高いし時間もかかる、という理由でオレはタクシーへ戻ることにした。


 戻ってきたオレをみてドーさんはびっくりした顔をオレに見せた。ドーさんがわるいわけじゃない。彼はオレがレストランと言ったから、連れてきただけだ。 わがままだったけどオレは、ベトナム語で「高い」といい、フォーのイラストを指差した。


地元の雰囲気を味わえ、時間もかからず、さっと食べられればそれでよかった。


ドーさんはちょっと考えたようで、とにかくタクシーを出した。 地元っぽい人が歩いていたので、ドーさんが何やら聞いてくれている。 そしてまた走り出す。 


日本の、いわゆる田舎の小さい食堂のような店の前で停まった。フォーの写真看板が出ていて、確かにフォー屋さんのようだ。 聞いてくる、というジェスチャーをし、ドーさんは素早く降りて店へ入った。


戻ってきたドーさんは、嬉しそうにOKとオレに伝えてきた。 

 店に入ると、上半身裸で昼寝でもしていたのか、青年が眠そうな顔でポロシャツを着ているところだった。昼時が過ぎて休んでいたようだ。


 店の奥が自宅になっているようで住まいが丸見え。彼の両親なのか、エプロン姿のおじさんとおばさんがオレを見てちょっと驚いたような顔した。外国人観光客が食べに来るのは珍しいのかもしれない。 

 そしてそれ以上にオレをびっくりさせたのは寝起きの青年の言葉だった。 


 「ニホンのカタですか?」 


 聞けば、大学で日本語を学んでいて、来年、福岡に留学するらしい。古都フエに来て、たまたま入ったフォー食堂で、日本語を学ぶ学生と出会う。なんとも嬉しい偶然。 


 注文をして見ていると、その青年が肉を切り、フォーを作っていた。

学校がない時は家の仕事をしてるんだろう、と察した。 すぐに持ってきてくれた。まさにファーストフード。二時間半もかけてダナンからやってきて、暑い中歩き回って汗をかいたあとの、塩の効いたフォーを食堂でいただく。 

うまかった。 

日本でなんとか日々をこなして生きていると時折、価値観が覆される出来事に出会う。予期せぬ事態になることもある。人に、その全てを話せないような悲しい出来事もある。 

心がいっぱいで、何も言葉が出てこない。


 旅をしていると不意にその場面が思い出されて、日本にいるもう一人の自分を客観的に見つめることができる。 

 自分の両親のことを思い出した。育ててもらう過程で本当に色々あったし心配、迷惑もかけた。

今は人並みに親子関係を築けている。 


フォーを作っている青年と、その両親を見ていると、少しばかり過去の自分を重ねてしまう。 


ベトナムから日本へ留学だなんてお金もかかるんだろうな。息子がいなくなったあとは夫婦だけで切り盛りか。それはそれで苦労も、寂しさもあるだろうな。 


食べ終わって青年にお金を払う。フォーは日本円で150円くらいだったろうか。 


 「アリガトウゴザイマシタ」 


 「ありがとう。おいしかったです」


 彼の両親も、笑顔で見送ってくれた。良いお店に辿り着けた。


いつも思う、オレはそういう出会いの運を持ってるんだなって。 


 その日は、そのあとカイディン王朝のカイディン帝のお墓を見て、ダナンに帰った。

ここも見応えのある遺跡だったけれど、写真のみで。



門。


門を入ると、並んでいる石の兵たち。



この上がお墓。




金箔の像。




写真OK。

想像を絶する豪華絢爛な墓。すさまじい権力が想像に難くない。

廃墟好き、ドラクエ好き、歴史好きにはたまらない観光地だ。













帰りも同じく2時間以上かかり、ドーさんもだいぶ運転に疲れた様子だった。

でもホテル前でスタッフに記念写真を撮ってもらった時は満面の笑顔だった。  


ドーさんが、名前とタクシーの配車ナンバーが入った名刺をくれた。


また呼んでください、と単語英語で伝えてくれた。 


2日後、オレはミーソン遺跡に行くために再びドーさんに会うことになる。


ドーさんを見送ったあと、ビーチで 1時間ほどのんびりすることにした。

家族連れやカップルが、ライトアップされたビーチでそれぞれの時間を過ごしていた。 

 幸せそうなそんな声達をBGMにしながら1日を、あるいは人生の道を振り返ってみるのには、贅沢過ぎる時間だ。 

 何故ここにいるのか、今日という日に何を得たのか、なんとなく答えを見つけたくとも無心になり過ぎて何も考えつかない。 無になってしまう。 


 そんな時間を持つことができるのも、日本を離れ、真剣に考え旅をし、その日の夜に疲れてできることは自分だけの空間で無心になれる贅沢なんだ。 


 もう会うことないだろうな、あの青年には。 


 もう来ることないかもな、ここにも。 


 そんな旅情を無意識に背負いながら、過ごす時間が愛おしい。


 言葉にできない思いを抱えながら、ただ自分の判断力を信じて、行動する。


それでもやっぱり間違うし、こうしておけば良かったと後悔もする。

 

 旅は、その人の人生の生き写し。  


旅の形は十人十色。 


やっぱり、人生もきっと、旅なんだろうな、とダナンのビーチで波音を聞きながら考えた。


すぐ近くのベンチのカップルが抱き合って、何かささやき合っていた。

イラつかないのは言葉が分からないからだけじゃなくて、オレが今、ものすごく心広くいられるからだろうなと、自然と口元が緩んだ。 





おかやんの「とりあえず何でもひとりでやってみる」ブログ。

やりたい事は悩みながらなんでもやってみる。結果的に楽しんでる!また、何かに特化して書いているわけではありません。 書きたいことをごった混ぜにしてネタをブチ混んで書いていますhttps://www.instagram.com/the_unending_world/?hl=ja

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