ベトナム、ダナンから世界遺産の街フエへ向かう。。。ための前段階。
思い出はなにも、観光名所だけじゃない。「すげー楽しかった」だけで終わることもない。
旅へ行く前に考えることがある。
どんなことが待ってるんだろう。
どんな景色が見れるんだろう。
どんな人と出会うんだろう。
そしてオレはその時、どんなことを考えるんだろう。
それもまた思い出。人としての成長の軌跡。
①ホリデイビーチホテル、ローンさんからフエへの行き方を聞く。
ダナンから日帰りでフエに行くために、当初は高速バスを考えていた。安いし、なにより冒険できるから。チケットはどのホテルでも手配してくれるらしかった。
いつもオレは、日本で知識として調べられるだけ調べて現地へ行くのだけれど、やはりどうしても抜けが出てくる。
朝食を済ませたあとにフロントへ行くと、ローンさんはチェックアウト客の対応をしていた。身長は150くらい。とても小柄だ。けれどテキパキとスタッフに指示を出し、パソコンをカタカタと高速で打ち、体のでかい欧米人相手でもどうどうと接して流暢に英語を話す。
きっと、どこか海外でホテルサービスについて学んできたのだと思う。 彼女に「高速バスでフエに行きたいんですが、チケッットを取りたい」、と伝えると、難しい顔をする。 「片道は安いのですが、日帰りの往復がないんです」
なにー !? 「地球の歩き方」をよく読むと時刻表が書いてある。
朝乗ったら、夕方帰るバスが、 確かに、 ない。
どうすべ、どうすべ。。。。
ベトナムで、つい、群馬弁が口からこぼれる。
ネットで必死に高速バスについて検索をしても、フエ → ダナン → ホイアン(またはその逆) という経路は見つかるがダナンから日帰りできる方法がない。
HISなどの日帰りツアーを見てもやはりちょっと高い。
バスなら往復1500円くらいなのに、ツアーだと昼ご飯付き、観光地入場料込みで一人約1万5000円。
高っ!!!
「地球の歩き方」にはこうも書いてあった。
タクシーをチャーター。 あれね、夢のタクシーチャーターね。。。一応、タクシーでも行けるかローンさんに尋ねる。
ローンさん、タクシー会社に電話してくれた。
すぐ対応してくれて本当に助かります。。。
フロントで電話をしながら何やらメモを書いている彼女。戻ってくるなり、金額と内容を提示してくれた。
朝にホテル出発、定番観光コースを回って、夜にホテルへ帰ってくる。
日本円で(たしか)7500円くらい。 あれ?意外となんとかなる値段。か?。
なにせダナンからフエまで二時間半くらいかかる道のり。
往復5時間。 妥当な値段かもしれない。
しかも仮に高速バスで行ったとして、現地での移動をどうする? いちいちタクシーひろうのか?
調べたところ、現地タクシーはたいてい誰かのチャーター車らしい。とすれば、短期間の旅行、時間が限られていることを考えればホテルを往復してくれ、現地での移動も助かるタクシーチャーターがベストな決断かもしれない。
見たい所はみよう、よし、ここは金に物を言わせてやろう。。。。
オレは覚悟をして、お願いした。
ローンさん、ノートパソコンを使って、フエまでの道のり、途中に立ち寄る所、フエでの主な観光場所の画像を見せてくれ、説明してくれた。
お礼を言うと、決まって笑顔をくれる。 助かりました。
英語が少しでもできる運転手を、と頼んではいたが苦笑いで「あまりいませんね」とのことだった。
次の日の朝、約束の時間の10分前にはフロントへ行く。
ベトナムの人は時間にルーズだろうと思っていたが、運転手さんはもう到着していた。
オッサンを想像していたけれど、来た運転手さんは30歳手前くらいの若い男性。
大人しそうだけれど、行動はきびきびしていて、笑顔も素敵だった。
ベトナムの2大タクシー会社のうちの一つ。ビナスンタクシー。
運転手さんの名前を聞くと、ドーさんと言うらしい。
ホテルを出発して、車内ではお互いカタコトの単語だけの英語で言葉を交わし名前と日本から来た、ということだけ伝えた。
彼は仕事だからなのか、それとも性格なのか、ベトナム人にしてはドーさんは丁寧に運転してくれる。他の車のようにクラクションは鳴らさないし、蛇行運転で追い抜きもしない。
タクシーの車内には、日本と同じく企業の広告があって、それは宿泊しているホリデイビーチホテルのものだった。いわばビナスンタクシーにとってはスポンサーだ。なので提携しているのでタクシーも安く頼めたのかもしれない。そういえばホテル前に常時停まっているタクシーは全てビナスンタクシーだった。
ドーさんが「ミュージック、、、OK? 」と聞いてきたので、ok、と答えた。 すると彼は、USBをプレイヤーに差し込んだ。しばらくするとベトナムの音楽やら聞き覚えのある洋楽バラードが流れ始めた。
心地よい曲をききながら少しずつダナンを離れ、フエへと向かった。
②ハイヴァン峠 ホテルから40分ほど走ったろうか。山をぐんぐん登っていき、背後にはダナンを見下ろす絶景が広がっていた。
何やら大型バスやタクシー、バイクがたくさん停まっている場所が現れた。お土産屋もたくさんある。日本でいうドライブインだろうか。道路をはさんで反対側に古びたレンガ作りの遺跡のような建物が何棟か建っている。ハイヴァン峠だ。
「地球の歩き方」によると旧日本軍が使用したとのことで、ベトナム戦争時にはアメリカ軍が使用していたらしい。 絶景なので、観光客はみな散歩をし、写真を取っていた。
しばらく散策し、お土産屋の駐車場に戻ると「トイレはこっちだよ」と客引きの優しいおじさんに言われて使う。 使うが「何も買わない」というアビリティをきちんと発揮。
トイレから戻るとドーさんは、仕事でしょっちゅう来るのかお店の人と話してくつろいでいた。オレが笑顔を送る。それに気付いたドーさんは慌てた様子でタクシーに戻ってきた。なんとなく彼の優しい人柄が分かってきた。
③運転手 ドーさん ハイヴァン峠からはひた走った。
途中、小さなビーチリゾートを右手に目にして以来、道は大きいがひたすら田舎道を行く。
ドーさんは、良い景色があるとそこを指を指して「ピクチャー」と言ってくれ、車を停めてくれた。オレはその度にカメラをかまえた。
他に会話という会話はなかった。単語英語では会話は続かないし、オレはベトナム語はさっぱりだ。
運転する彼の指には結婚指輪がはめられていた。薄っすらと黒い肌にシルバーのそれが光っていた。
子どもはいるのかな。きっと良いお父さんだろうな。ダナンに住んでるのだろうか。そういったことを聞いてみたいけれど、なんと聞いていいのか分からない。
こちらは信号などないので快適に進んでいたが、一度、工事渋滞に捕まってしばらく停車した。
その時、ドーさんが助手席に置いてあったクーラーボックスから冷えたミネラルウォーターをだし、差し出してくれた。言葉はなかったが、笑顔だった。
ベトナム語で、ありがとう、と伝えた。 暑さに弱いオレはもちろん水は持ってきてはいた。でも、それをかばんの中に隠し、ドーさんがくれたミネラルウォーターを開けて飲む。
よく冷えていて、おいしかった。
なにより、その優しさが嬉しかった。まるで日本のおもてなしだ。
そういえば・・・。 よく考えたらオレは図書館で「地球の歩き方」と一緒に借りた「ベトナム語会話」の本も持ってきていることを思い出した。
フエに着くまで景色そっちのけで、ベトナム語を覚えることにした。
ドーさんの分かる言葉で、少しでも意思疎通をしてみたかった。
なんだか急にドーさんとの旅が始まったような気がして、オレは後部席でこっそり微笑んだ。
旅へ行く前に考えたことがあった。
どんなことが待ってるんだろう。
どんな景色が見れるんだろう。
どんな人と出会うんだろう。
そしてオレは、どんなことを考えるんだろう、と。
その答えが少しづつ見えてきたような気がした。
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