「日々の葛藤と言えば笑われるだろう。そんな日常生活からほんの少し離れるためにオレは旅へ出かける。移住ではなく、帰る場所を残してくる旅だからこそ味わい深く、また旅の終わりの儚さを拒否できない。」
・・・てな事を考えながら初秋の夜にまだコールドが喉を潤すコーヒーを飲みながら、ケータイで新人グラビアアイドルの「1000年に一度の童顔巨乳」の記事を目を見開いて読んでいるとは誰にも言えない。「1000年に一度」っていうコピーが流行っているようだな。
いや、、、そんなことはどうでもいいか。
そんな風に深い思考と男の性は切っても切れ離せないことをオレたちは知っている。
日常から少し離れ、旅をスタートさせるために、仕事の都合をつけ、航空券を取ったり、宿の予約をしたり、現地の風俗情報を・・・いや、おいし食べ物などの情報をネットや本でかき集める。 高鳴る気持ちと共に少しずつ旅行の計画を立て、現地に着けば半ば忘我しながら異国を貪るように歩き、僅か数日の、それでも日本の社会人としては有難い休暇を過ごす。 空港で時折見かける大学生の団体の、その楽しそうな笑顔と、まだまだ社会的マナーが身に着いていない言動の節々の裏側に、これから海外へ行くんだという高揚感を見つけ、オレはこう思った。
「スーツケースってのはまたがって乗るもんじゃねえんだよバカヤロー、張り倒すぞテメー! それで社会は自分に合わないとか言ってんじゃねーよタコ!おめーらみてーのが、海外でぼったくりの金額を払ったり、金盗まれたり、物盗まれて大騒ぎするんだバカヤロー!」
いや失礼、、、オレとしては公の場での彼らの悪ふざけを微笑ましい気持ちで垣間見ながら、自分の初海外の記憶を反芻していた。
初海外はひとりだった。まずはパスポートの申請手続きから始まり、海外経験の多い先輩にアドバイスをもらいながら、色々なことを済ませていった。 行き先は東南アジアのカンボジア。シェムリアップ市郊外の村の小学校へ教育ボランティアに行った。
滞在は村長さんちでホームステイ。日本各地から来る他のボランティアとは現地空港集合。
初海外で、乗り継ぎもあり、乗り継ぎ地にて次のチケット発券もあり、成田空港で出発前からおかしな汗が出たのを覚えている。
日常生活以外の別世界なんて、ピンサロくらいしか、、、、いや、、、ディズニーランドくらいしか知らなかった。
「ホントに初対面で、、、いや、、ホントに海外なんてあんのかな。この大地は象と亀が支えていて、海の向こうは、滝になっていて流れ落ちてるんじゃなかったっけ?」
カンボジアに関しては、テレビでアンコール遺跡群を見た高校の時からその歴史や造形美に憧れ続け、また内戦の過去、根強く残る貧困や教育事情についても知り、行ってみたいという思いをずっと持ち続けていた。 ボランティア。 滞在する村は電気も水道もガスない。ほとんどの家は日本の縄文時代のような、木で作られた高床式家屋。土を盛り上げただけの道路。たまに通る車は赤土を巻き上げていく。
乾季の灼熱の時期、二週間、村の小学校で英語と日本語をなんとか教えてきた。それが初海外であり、海外へひとりで行く度胸ってのはそこでついたのだと思う。 その後、いくつかの東南アジアの国を旅した。オレは一度行った場所にはもう行きたいとは思わないタイプであるが、カンボジアは違った。憧れ続けた世界遺産アンコールワットがあり、初海外の思い出もある。今度は観光をしたいという気持ちが膨らみ、いつしかもう一度行きたいと思うようになった。 そして、夏休みを利用してカンボジア再訪を果たした。
つづく。
(カンボジア ボランティア記は以前、mixiに載せたので今回は省略。)
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