2024.06.15 01:26新世界紀行 エジプトの旅⑤ 初日の朝足元の泥濘やごみ屑に目を凝らしつつ、ぼくは宿へと向かって歩みを進めていた。今にも崩れそうなボロ車が埃と黒煙を撒き散らしながら通り過ぎ、その脇を痩せ衰えた猫が黙々と歩いている。別段、ゴミ捨て場でもないはずの空き地には、生ゴミ、プラスチック、ビニールなどが無造作に散乱している。腐敗臭がしないのは、雨のせいか、それとも涼しい気温のせいか。あるいは、既に鼻が麻痺しているのかもしれない。映画かゲームの世界に迷い込んだかのような異世界感に満ちた街を進む。やがて宿の前に到着する。隣には商店があり、日用品や飲み物、天井からは菓子類が乱雑に吊り下げられ陳列されている。昭和の駄菓子屋を思わせる店構えだ。
2024.06.08 08:20新世界紀行 エジプトの旅④ カイロ市街到着七時前の空は未だ暗く、天気の悪さも相まって一層の陰鬱さを漂わせていた。道路のアスファルトは埃に塗れ、雨に濡れた光景が明らかに見て取れる。小雨は断続的に降り続いているようだった。それにしても、エジプト到着の日が雨だとは予想だにしなかった。空港からギザへ向かう際に遠くに見えるというクフ王の大ピラミッドを楽しみにしていたが、その望みは叶いそうにない。ギザへと向かう道は高速道路の如く、庶民の住宅街を見下ろし、遥か遠くまで視界が開けている。見える建物のほとんどは赤レンガ造りで、中には崩れたものも見受けられた。エジプトの渋滞は日中に酷いと聞いていたが、今の時間帯の道路は空いており、そのおかげで道路状況がよく分かる。白線など存在せず、車は好きなように走っている。一体...