2024.05.04 06:29新世界紀行 エジプトの旅② アブダビ空港成田空港を出発したのは16時55分であった。アブダビまでのフライトは11時間35分、1日の半分を費やすほどの長さである。何をしていても、やがては飽きてくる。今回の旅に持参した本は、沢木耕太郎氏の新作『天路の旅人』である。普段ならば本をそのまま鞄に詰め込むのだが、今回は荷物の軽量化を図るために初めてデジタル版を購入した。本というものはやはり手に取って読むのが一番だけど、こうした旅の際にはデジタルの利便性を感じる。画面に表示される文字数が紙に比べて少ないためか、読む速度が一層速く感じられる。機内の映画は日本語字幕が少ないと聞いていたので、アマゾンプライムでスマホにダウンロードして持参した。NHKドラマ『岸辺露伴は動かない』と映画『岸辺露伴 ルーブルへ行く』...
2024.05.03 13:51新世界紀行 エジプトの旅① 世界がまたひとつ、新しく「新世界」という言葉に初めて触れたのは、遥か東方の地、中国の大都会、上海であった。現代的な摩天楼がそびえ立ちながらも、歴史に名を刻んだレンガ造りの建物がその姿を残し、歩行者天国の繁華街には高級ブランド店が連なっていた。しかしその対極に、細い路地に入ればやがて朽ち果てゆくかのような古びたコンクリート建築の住宅地が広がっていた。時代が混ざり合った、まさに雑多な都市の一端であった。その都会の片隅に、「新世界城」と称される、眩いネオンに照らされた巨大な建築物が見えた。そこへ近づいてみれば、ビルの壁面にはオメガの広告が掲げられている。日本における「伊勢丹」「三越」といった百貨店に相当するものであった。「城」という名の示すところは、おそらく百貨店を指すものであろう...