新世界紀行 エジプトの旅③ カイロ空港

アラブ首長国連邦、首都のアブダビ空港。


深夜3:05発カイロ行き。


搭乗ゲートを通過し、シャトルバスで飛行機まで向かう。



カイロへの4時間の空の旅。


その短い時間も快適に過ごそうと、ぼくは通路側の座席を選んでおいた。事前に有料の座席指定をする代わりに、フライトの24時間前に始まる無料のオンラインチェックインを利用し、席を確保した。



機内では疲労と睡眠不足もあったため、目を瞑りながら体を休めることに努めた。4時間の旅路は、ただぼんやりと過ごすうちに終わってしまった。
いよいよ、エジプトの地に足を踏み入れる。



入国審査の前に、まずビザを購入しなくては。


25ドルのビザは、窓口に金を渡すだけで手に入る。シール状のビザはわずか2センチ四方。購入は数秒、金を渡せば出てくる、という雑なもの。その簡便さに逆に驚かされた。これでは誰にでも容易に手に入る品のようだ。


無事に入国審査を通過した直後、パスポートをしまおうとしてふと気づく。


パスポート袋が手元にない。ポケットにも見当たらない。


それはかつて使っていたSONYのMDウォークマンの巾着袋。


15年もの間、大切にしてきたものであった。焦燥の中、すでに入国しているので審査場前のエリアに戻ることはもはやできず、ここで失くしたとなれば旅の出だしとしては良くない。ぼくのことだ、きっと頭の片隅にこのミスが残り続けて、何かと旅の最中に気にかけてしまうに違いない。


すぐさま行動に移した。


ちょうど審査を終えたばかりの日本人女性に声をかける。


「あの、グレーの布の袋、落ちていませんでしたか?」


彼女は親切にも、

「あ、ありましたよ!他の方が入国審査の係に届けてたような気がします」

と教えてくれた。



入国審査を終えたばかりでこちらに向かって歩いてくる、アラブ人のおじさんがいた。

見覚えがある。
機内で隣に座っていたおじさんだ。

同じように尋ねる。


「あったぞ。そうか、あれは君の物だったか。係員に届けた。待て。」



おじさんはそう言い、審査窓口に戻って確認してくれた。


すると、まさに飛行機内で隣に座っていたおじさんが、私のパスポート袋を手にして戻ってきたのだ。驚きと感謝の気持ちで胸が一杯になった。


「気をつけてな」


その言葉と共に、おじさんは笑顔で去っていった。到着直後からの人の温かさに触れ、これは良い旅の始まりだと感じた。


インドネシアのジャワ島へ行った時のことがよぎる。


勧誘がしつこいというタクシー運転手がバス乗り場を教えてくれて、なんだか嬉しかった。



あの時も、本当に良い旅になったんだ。
「ありましたか?」


 それは先ほど最初に声をかけた日本人の女性の方だった。


一連の流れを伝えてぼくはお礼を伝えた。この方はここ、カイロで日本人の友人と待ち合わせしているらしく、仕事の都合でその友人は明日に日本から来るという。そういう旅の方法もあるんだな、と不思議に思う。


 世界的観光地のエジプトでは旅人は皆、行くところはほとんど一緒。またどこかで会うかもしれませんね、という話をしてお別れした。


さて、ぼくは預け荷物がないため最速で入国審査エリアを出る。



早朝6:15。
入国最初のミッション。現地通貨、エジプトポンドを手に入れる。


たまたま目に入ったATMにクレカを入れてキャッシング操作。


手数料などを考えると1エジプトポンド(EGP)が約5円。


まずは1万円分を引き出す。
細かい紙幣が欲しかったが、下調べした操作ができず、500EGP紙幣が4枚になった。


現地の現金を手に入れるとやはり幾分安心する。これで飲み物や食べ物を買える。
何より、次なるミッションとして、空港内でSIMカードを手に入れることに繋がる。


そしてタクシーアプリ、ウーバーを使って空港からギザにある宿まで行くこと。
どの国でも、旅人にとってここが最初の大きなミッションである。
どうやらSIM屋は3件。


そのうちの1件に日本人男性客がいることに気付いた。


まさか自分より早く審査を抜けて来た人がいるとは、と驚きつつ、情報収集のためにも話しかけてみる。


「あの、ここはいくらですかね?」
30代半ばくらいの方で、話もしやすい。


どうやら、SIM屋は3件あるがオープンしている店はここだけのようで、買うとしたこの店一択のようだ。


他の店へ行って店員に話しかけてみると、7時オープンだという。それでも早いほうだろう。


オープンしている店が結局一番値段が高かったがその分、ギガ数も多いのでここで買うことにした。



男性にこれからどこへ行くのか尋ねると、やはりピラミッドだというので、Uberタクシーに一緒に乗りませんかと提案して、一緒に行くことになった。


ピラミッドのあるギザまで45分ほど。料金は日本円で1600円くらいだろうか、わずかな時間、わずかなお金をシェアできるのも1人旅の醍醐味だ。


SIMカード屋の前にベンチがあるので、そこで座ってSIMを入れてスマホを起動確認。


上着を脱いで、エジプトの気温に慣れる準備をする。


そうしていると、今度は別の日本人カップルの女性のほうが慌てた様子で話しかけてきた。
「あの、すみません、SIMって、どこで買って、どうやるんですか?」
その質問からして、海外の旅に慣れていないことが分かる。
彼氏のほうは自信なさげに隣に立っていた。
ぼくらは店や料金を伝え、カップルが買ってきたSIMを挿入してあげ、接続してあげた。
初めての国へ到着後のこの緊張感、集中力、行動が自分の全てを賭けているゲームが始まった雰囲気を感じ、ワクワクする。
カップルは空港からホテルまで、日本からチャータータクシーを予約してきたそうでそれで向かうという。当然ぼくもそういう手段について調べてきたが、値段は2倍どころか数倍する。


海外での移動に自信がない人、不慣れな人はその数倍の値段を「安心料」として払う、という人は多い。


しかし、ぼくは「バックパッカー」なのだ! 


現地の人と同じ交通手段を取りたいのだ。


カップルの女性に尊敬と言葉と眼差しをもらい、ぼくらは空港の扉を出た。
車社会の群馬在住のぼくは、タクシーに乗ることなどない。


よってUberアプリは初めて使う。


下調べした通りに操作し、安いタクシーを配車した。


そしてここからも下調べ通り、呼んだタクシーと合流するのがここカイロ空港ではかなり難しいのだ。


理由1
タクシーはたいてい駐車場で待機しているが、その駐車場までなかなかたどり着けない。


理由2

配車するとタクシーが動き出すが、ぼくらの位置を運転手がよく理解してくれない。


理由3
これが最大の理由で、アプリにはタクシーナンバーが表示されるが、実際のタクシーにはアラビア数字が記載されているため外国人には全く読めない。よって、悪意を持って「オレがUberだ」と近づいてくるタクシーに乗ってしまってぼったくられる人もいるという。


この対策は、実は簡単で、グーグルアプリのカメラ翻訳機能を使ってタクシーのアラブ数字を読み取ればすぐに翻訳してくれる。これを使って自分が読んだタクシーを判別する。


知り合った男性Aさんは、1人旅とのことだがぼくのようにバックパック1つではなく、でかいキャリーケースを引いていて移動がぼくより遅いため、ぼくがスマホを見ながら配車したタクシーと待ち合わせに急いだ。


駐車場は確かに空港でた場所から見下ろせるのだけれど、パーキングの表示に従って行くがどうもたどり着けない。


タクシーの位置を見ていると停まった。行ってみると何もない。


そこは道が橋になって交差していて、下を走る道にタクシーが待っている。
あれだ。


でも、どうやってここを降りたら・・・


ぼくがAさんをおいて小走りで先へ行くと歩行者用の階段があり、下へ降りれることがわかった。


再びトレランで鍛えた脚で階段を駆け下り、タクシーのナンバーをグーグルで読み取り、確かに自分が配車したタクシーと確認した。


「Aさん、こっちです! このタクシーで合ってます!」


ぼくがまだ階段の上にいる彼に呼びかけた。


タクシー運転手は、いかにもエジプト人といったアラブ顔の小太りのおっちゃんだった。


Aさんのでかいキャリーケースを、おっちゃんは垂れ落ちそうな自らのでかい腹を上手によけながらトランクに詰め込んだ。


空港からギザまでの道中、エジプトの風景が新たな冒険の幕開けを感じさせた。

おかやんの「とりあえず何でもひとりでやってみる」ブログ。

やりたい事は悩みながらなんでもやってみる。結果的に楽しんでる!また、何かに特化して書いているわけではありません。 書きたいことをごった混ぜにしてネタをブチ混んで書いていますhttps://www.instagram.com/the_unending_world/?hl=ja

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