2018.08.26 15:00パリ組曲⑳ 「ワタシのことも思い出しますか?」 サクレ・クール寺院へ行ったその午後、2人がサン・ラザール駅前のカフェで昼食をとっていると、予報通り雨が降り始めた。またすぐに止むかと思われたが、そのまま勢いを増し、結局2人はミヒャンが持ってきた傘でなんとかずぶ濡れを免れ、かけ足でとりあえずホテルまで戻ってきた。
2018.08.03 13:22パリ組曲⑲ 祈る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・パリ滞在、4日目の朝、ミヒャンは谷川のホテルでむかえた。 彼女のたいていの荷物はもうここにある。残るパリの夜をここで過ごすことにしたようだった。谷川はそれを尋ねはしなかったが、そう察していた。 察する、という心理的作業と共に谷川は今まで生きてきたような気がする。 はっきりとは聞かず、きっとこの人はこういう考えなのだろう、こういうことが言いたいのだろう、と感じては脳裏に浮かぶ疑問を消し去ってきた。 何も聞かず、雰囲気で感じ取る。人間関係においてそれは時に効果的で、時に関係を歪ませた。 察することで、彼はいつも感情を表に出さなかった。怒ったり、悲しんだりする必要もなかった。 覚...