八ヶ岳ブルーを見に行こうじゃねえかこの野郎①

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8月の中旬。

夜も11時に差し掛かろうとする頃、オレは八ヶ岳登山口の一つである「桜平」へと続く山道で車を走らせていた。




整地されたアスファルト舗装が近未来に感じるほどここは荒れた砂利道であり、車の腹を擦ってしまいそうなほど地面は波打っている。加えてグーグルマップに道が載っていないため、いったいどこを走っているのか分からない。


本当にこの先に駐車場などあるのか。 


「トイレのある駐車場に停めました。」  


オッチーからラインが入る。


返信をしたが、送信に時間がかかる。


しかしなんとかネットは繋がるようだ。  ヘッドライトが道の先を僅かに照らしているが左右に目をやれば漆黒の闇。


一体何が潜んでいるか分からない。突然目の前が行き止まりになる可能性だってある。


こんな時のために「世にも奇妙な物語」のテーマソングをitunesに入れてきた。




さっそく流そう。・・・・。





よし、雰囲気はばっちりだ。  




どうやら右側は斜面。ガードレールなどない。落ちないことを祈りながら進む。どれくらい進んだかは分からない。




「駐車場 下」という看板に気付き、ここが登山道に続いている確信を得る。次に「中」、「上」とあるはずで、オッチーとは「駐車場 中」で待ち合わせることになった。  




白い看板に気づいてゆっくりとそこへ入り、ヘッドライトに浮かびあがったのは、数台の車。どうやら無事に到着したようだ。


オッチーはすでに車中泊の寝る準備を始めていた。久々の再会の挨拶もそこそこに、明日の出発の時間を決めて体を休めることにした。



見上げた夜空は星が瞬いている。明日の天気が期待できそうだ。  


今回から導入したアイマスクのおかげで車中泊とはいえよく眠ることができ、快適に朝を迎えた。  



快晴。  




登山者の間ではこの空の色を格好良く「八ヶ岳ブルー」と名付けているそうだ。








ネーミングが戦隊モノっぽくていいじゃないか。  





7:00「桜平 中 駐車場」出発  









今回の登山予定。初日は、「桜平登山口」から約80分の山小屋「オーレン小屋」を目指し、そこへテントを張る。その後、天狗岳を経由し、山小屋「黒百合ヒュッテ」へ行き、お昼。そしてまた「オーレン小屋」のテントにて一泊。翌日に、八ヶ岳の硫黄岳を目指す山行だ。  






夏沢鉱泉小屋。7:40


ちょっとした旅館のような構えだ。  軽食、お土産、宿泊。








つづく登山道。

八ヶ岳は、苔むしの森で、緑色に生い茂る苔を堪能できる。    







予定通り80分ほどでオーレン小屋に到着することができた。 

     

ここのところの雨のせいなのか、テント場は凹凸で波打っている箇所も多く、また昨日からの登山者で良い場所は取られてしまっていて、残っている場所の中からオレたちはより良い場所を選別した。    



いびき対策、宴会の騒音対策のためにも、少しでも他の登山者の音が届きにくいテント場の端であること。少しでも地面が平らであること。雨水の通り道ではないこと。これらを考え、場所を決定、テントを張る。    



いいんでないかい。    



それでは東天狗岳へと向かう。  





それはまるで、何百年もここで眠り続けている巨大な怪物のようだった。忘れ去られ、動くことを諦めた巨大な生き物。そうだ、オレは山を生き物として対峙し、感じ、見つめているのかもしれない。そう思うと、山に対する挑戦心やそれをやって除けようという気持ちの高揚も理解することができるような気がする。  


オレは山を倒しに来たのだ。そんな興奮はつまり、無事に登山口へ到着し、無事に登頂し、無事に帰ることを意味しているのだろう。  





山小屋があるようだ。  

下調べ不足だった。ここに山小屋があるとは知らなかった。



見たい気持ちを抑え、まずは先を行く。    


オッチーはコマクサの撮影。    




登山道など、ここにはないかのような岩場の道。  以前、雑誌で見たことがあり、いつかこんな景色の中を歩いてみたいと思っていた。    


 いつか。

その瞬間がやってきたこと、そうなるように行動できたこと。ドローンを飛ばさなくても、空から自分の立ち位置を見ることができる。頭の中に描くことができる。どんなに素晴らしい場所に立っているかを、描くことができる。






  


目的の頃百合ヒュッテが眼下に見えてきた。  


そう、眼下と呼ぶほど急勾配の岩斜面を下らなければならないようだ。


    ゼイハア。  


到着。雑誌で見てから行ってみたいと思っていた黒百合ヒュッテ。  






外観に赴きがあって素敵だ。通年営業ということで、真冬でも営業している。  


ビジネス的観点から見ると、この山小屋営業だけで会社が成り立っているわけだ。競争相手もいない。恐るべし。  




軽食メニュー。




談話室の一部。



2階。小屋泊の方の大部屋。このように寝るのか。
もっと山奥の山小屋よりはスペースもあって綺麗。
けれども、まだ山小屋泊には抵抗があるなあ。



コーラを購入。お昼にする。

オッチーはコンビニおにぎり、オレはコンビニ弁当。

  


テント場はガラガラ。




別ルートからオーレン小屋へと戻る。  










根石岳山荘に立ち寄る。



戦後復興のようなトタン屋根に石を置いた古めかしい、歴史を感じる小屋とその隣に新築の真新しい小屋。  









  帰ってきて早めの夕飯。  



オッチーは、お米を炊き、さらにそこにスーパーで買ってきたというウナギを乗せる。さらに肝すい。立派な夕飯だ。  



オレは、ペヤングにアルファ米のエビピラフ。荷物は軽くはなるが、食に興味がないのはどうしたもんか。  オッチーは実に様々な食材を持ってきていて、ちゃあんと山でも食事を楽しんでいる。自分に持っていない能力、やる気をみると本当にすごい。尊敬する。  暮れなずむ山の中で、雑談をしながらの夕食のこの時間が実に愛おしい。  



ひとりでは決して味わえない、山を共有しながらの、のんびりとした時間に溶け込むかのようなリラックスするひと時。    


食後、オッチーは一足先に休んだので、オレは小屋の談話コーナーへ行って本を読むことにした。  



誰もいない。決して時間は遅くはないが、小屋泊まりの方々はすでにそれぞれの布団で休んでいるようだ。  


オレが囲炉裏に座って何冊か手にとって眺めていると、いつの間にか数人が集まってきて雑談していた。ひとりはおじいちゃん。


どうやらオーレン小屋のスタッフ、しかもオーナーなのかもしれない。他の方々はグループではなくて、なんとなく集まった他人同士らしい。  


そしてなんとなくオレもその話の輪に入っている。    


こんな、今の社会には失われつつある知らない人同士の自然発生的コミュニティがたまらなく素敵だと思えた。これも登山の、しかも山小屋の良さなのだろうなと感じながらお開きになるまでオレは皆さんとともに静けさを増す小屋で過ごし、おじいちゃんが囲炉裏脇に布団を敷き始めるところまで見て、テントに戻った。  



そして夜中、再び惨劇の夜となる。  つづく。 


おかやんの「とりあえず何でもひとりでやってみる」ブログ。

やりたい事は悩みながらなんでもやってみる。結果的に楽しんでる!また、何かに特化して書いているわけではありません。 書きたいことをごった混ぜにしてネタをブチ混んで書いていますhttps://www.instagram.com/the_unending_world/?hl=ja

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