始まりの地 香港&マカオへ⑨



聖ポール天主堂の階段下にある石のベンチで、休息を兼ねて座り、少しの間柿ピーをつまむことにした。


日本からの行動食として持ち込んだ柿ピーは、空きペットボトルにユニクロで調達した水とともに口にし、ただで飲み水を確保することは、自分自身でも頼もしいと感じた。


"行動食"とは、登山用語かもしれない。


登山、特にアルプスなどではゆっくり休憩する場所が少なく、また標高の高い山で立ち止まると体を冷やしてしまうため、歩きながら食べられ、かつ効率的にカロリーを摂取できる食べ物である。


登山とぼくのバックパッカースタイルは似ていて、とにかく進みたい。あらゆる好奇心を満たしたい。そのためなら食事はカロリーさえ摂れれば問題ない。


食に興味がないことが、良いのか悪いのか・・・。とにかく歩き回りたいのである。


柿ピーを食べていると、目の前のお土産屋の兄さんが往来する観光客らを呼び止め、何やら試食を配っている。


そういえばマカオは「干し肉」が有名らしい。


ビーフジャーキーのようだがもう少し肉厚。お兄さん、暇そうに座っているぼくにも笑顔でひとつ試食をくれた。


口にしてみると、なるほど、ビーフジャーキーよりもっと肉に近い感じでとても美味しい。これは買っていきたい。と思ったが香港ドルしかない上、たとえ香港ドルで買えたとしても持ち金がなくなってしまうため諦めることにした。何より荷物になってしまう。


一休みした後、「地球の歩き方」を見て近くの教会へ行ってみることにした。マカオは、そこかしこに教会がある。キリスト教の布教の文化を感じることができる。しかし、個人的な文化的興味としては、仏教やイスラム教、ヒンドゥー教の方が異世界感があり見ていて面白い。教会は質素で美しいが、「遺跡好き」のぼくにとっては少し物足りない。


教会を後にし、そろそろ帰路につくことにした。何せこのまま日帰りで香港に帰らねばならない。またパスポートを用いて行政境を越え、香港へバスで帰る。


グーグルマップを見ながら歩いていると、観光地ではないにしても庶民が住む街並みも素敵で、東洋と西洋が混在し、不思議な家々が並んでいる。観光名所を巡るだけなら確かに日帰りでもなんとかなる。しかし、ぼくのように歩き回りたい人にはとても足りなかった。


これは一泊すべきだった。かといって、その日程は厳しかったようにも思う。


仮に今夜、マカオで泊まると早朝にタクシーでも拾ってイミグレーションまで行き、バスに乗って香港へ入り、空港へ向かうことになる。知らない土地でその移動は時間的にもリスクが大きすぎる。どこかで何かしらのトラブルがあれば帰国便に間に合わなくなってしまう。香港へのバスも50分はかかり、しかも事前に運行時間は調べてはきているものの、その通り運行するとは限らない。



ぼくは歩きながら散々考えた挙句、やはり予定通り今夜のうちに香港へ戻った方が良い判断した。

時刻はすでに17:00。


日が長いためまだまだ明るいが、今から急いで香港へ戻っても19時は過ぎてしまう。宿へ到着は20時頃か。思いの外、随分マカオで長居してしまった。
幾分、早足で歩く。


まずはイミグレーション行きのシャトルバスがあるフェリーターミナルへ行かねばならない。またホテルサンズから無料シャトルバスでフェリーターミナルへ行こうと地図を見ていたが、どうやら少し遠回りになる。それなら、全て歩こう。グーグルを頼りに歩いていたが、どうも「地球の歩き方」の地図とグーグルマップの現在地を照らし合わせてもいまいち現在地が掴めない。



すでに時間が遅い中、なんとしても予定通り香港へ帰らねばならない。しかもできるだけ早く。その焦りが思考力を鈍らせ、ぼくは異国の地で初めて「道に迷った」。


実際には迷っているわけではないが、早く帰らねばという焦りに対してグーグルマップの案内がえらく遠回りなのだ。これでは予想以上に時間がかかってしまう。



紙の地図上ではもっと近道があるはず。香港行きバスは深夜までやっているはずだが、その情報が合っているとも限らない。バスに乗った方がいいか。いや、今更バスを調べる思考力がない。ここまでマカオ通貨を持たずに来たのだ。



今更、マカオ通貨のパタカを買っている暇はない。どうする。焦っていると、横断歩道を渡る多くの歩行者を誘導する警察官が目に入った。聞くか。でも、あんな仕事中の警察官にか?迷惑だろう。いや、異国の地でそんなこと言ってられん、聞こう。






ぼくは、駆けて行き勇気を出して「エクスキューズミー」と口から放った。地図を見せ、「フェリーポートへ歩いて行きたいんですが、どうやったら行けますか?」と聞いた。警官は一瞬驚いた様子を見せた。ぼくが外国人だということ、それに自身が交通警備中だったからかもしれない。そしてもうひとつ理由があった。


「歩いてですか?」 そう、歩いて、なのだ。


「バスかタクシーは? ここからは遠いですよ。」 


遠い、という言葉に不安が募る。しかし3〜4キロなどぼくにとっては徒歩圏内なのだ。


「いえ、歩いて行きたいんです。」 


こういう時もどうやらぼくは運を持っていた。

「それなら、この先の道を道なりに行ってください。そうすると歩行者専用のトンネルがあります。それで丘を抜けられます。」


 警官は紙の地図を見ておおよその現在地を教えてくれた。もちろんその地図にそんなトンネルは載っていない。

「この先」と言われも道がくねっていて先がよく見えない。ぼくは半信半疑だったが、行くしかない。礼を行って、先を急ぐ。すると、確かに歩行者用のトンネルがあり、人々が行き交っている。



助かった!!


大幅に距離を短縮でき、無事に高級ホテル街へと抜け、再び地図を見ながら歩く。それでも、例えば高架下にて道が交差しているような地図上では判断つかない場所もあり、実際にそこが行けるかどうかの賭けをしながら歩いていった。
フェリーターミナルになんとか徒歩で来れた時にようやく少しほっとし、バスから降り立った場所を発見した時は心底安堵した。当然ながら行きと帰りでは景色が違うため、本当にこの場所で合っているのか思い出した時はようやく帰れる、と胸を撫で下ろした。この時間に香港へのイミグレーションに向かう人は少ないようで、シャトルバスには数人のみ。ぼくが乗り込んで程なく出発した。



名残惜しい、という気持ちが正直なところだった。
まだまだマカオの街を歩いてみたかった。



いつの日か、その名残惜しさを回収しに来ることがあるだろうか。





来ることが、ある、だろうか・・・。





電車でもバスでも、車窓を流れる景色はいつだって旅人を哲学者にしてきた。



人生とは、運命とは、人間とは、ぼくとは。この人生はどこへ向かうのか。どんな人生を歩んで来れたろうか。どこか遠くに行くたびに、ずっと考えてきた。



その大半がワクワクだった。不安なことを不安がっていてもしょうがない。
不安なことを考えたってしょうがない。ここ、マカオのように例え短時間でも自分が過ごした場所を離れる時、強烈に振り返る思考が発生する。


自分はどう歩めてきたろうか、って。


そして、旅の時は感傷に浸っている間も無く次の行動が待っている。


さて、無事にマカオのイミグレーションを出て、バスチケットを買い、香港に戻り、電車に乗って今夜の宿の駅まで行き、ミニバスを探して乗り込んで、宿まで行かねばならない。


どうなることやら。








おかやんの「とりあえず何でもひとりでやってみる」ブログ。

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