ウズベキスタンの旅㉝ 夜行電車


無事にブハラの駅に到着する。





来た時は昼間で、多くの乗客、客引き、車、タクシーで賑わっていたが20時を回った今は人気はほとんどなく、駅前を照らすライトが闇をただ映し出していた。


あの時、電車に乗ってきた女性に助けられたんだなよな。


わずか一日前だというのに、到着時のことがひどく懐かしい。


それは達成してきたことが大きいからだろうか。


あまりにも非日常だったからだろうか。


そのわずか一日前の自分とは、まったく別の心境に立っている自分に驚かされた。



手荷物検査を兼ねた改札をチケットを見せて通過する。


これから21:21発の夜行電車で、8時間ほどかけて首都タシケントまで戻る。




夜行電車はこれで二度目の経験だ。日本では乗った経験はない。
最初はインドだった。日本でも経験がないのに、インドの、しかも汚く狭い、揺れまくる電車は本当に刺激的だった。疲れや眠気をすっ飛ばして楽しくて仕方なかった。


しかし、今。ここ、ウズベキスタンのブハラ。


真冬に入りかけたこの季節で、毎日歩き回っているだけでも疲れるが、寒さで体が縮こまるためか疲労も深い。
もう、眠くて仕方ない。


こちらへ来て三度目の乗車。すでに自分の席もすぐに見つけられるようになった。


たしか通路が狭くベッドが詰め込みの3等車からあったが、少しでも寝られるようにと1等車チケットを買っておいた。個室に2つのベッドだ。それでも日本円で1000円くらいしか変わらない。


部屋を探し当てて開けると、まだ誰もいない。もしかすると私の貸し切りか!と期待してしまうが、まだ発車まで40分もあった。



↓これは3等車。個室どころか、カーテンもない。通路の両側にベッド。しかも二段ベッド。
インドではこのタイプの電車で、カーテンがあったのが救いだった。

↓これが1等車の個室。知らない人と一緒になるのは、それはそれで安全とは言えない。特に女性は。おそらく現地の女性が一人で乗ることは滅多にないのだろうが。

↓1等車の通路。左側が個室。


貴重品を持って、車内や駅を散策してまたベッドに戻り、横になる。
疲れがどっと出てきて、一気に眠くなる。


どうせ、景色は何も見えないんだ。到着まで寝てしまったほうがいい。
ぼんやりしていると、突然ドアが開けられた。もうひとりの乗客のようだ。
残念だが、どうやら貸し切りにはならないらしい。


体格の良い中年の男性。挨拶だけは済ます。


横目で見ていると、狭いベッドの空間で必要な荷物を手際よく出し入れし、用意されていたシーツをベッドに敷いた。


さすが現地の方だな、と妙に関心してしまう。


私は旅の終盤で疲れも眠気も深く、できるだけ早く寝てしまいため、話しかけられないように横になったままうつらうつらしていた。


ただ、旅の健康管理にと毎日飲んでいたビタミンサプリを飲み忘れていたことに気付く。加えて朝まで寝れるように、睡眠サプリも飲んだほうがいいなと考えた。


仕方なくむっくりと上半身を起こし、足元のザックからガサゴソと袋を探して取り出し、薄暗い中、数、種類を間違えないように手のひらの中で確認する。


すると、男性が話しかけてきた。
「薬か? 調子悪いのか?」

ウズベク語のなまりが入っているのだろうが、英語であった。
「いえ、ビタミン剤です。」


 そういって、私がコーラでそれを飲もうとしていると止められた。
「水か、お茶で飲んだほうがいい。そうだ、お茶を持ってくるから待っていてくれ。」


 ありがたいが、これは長話が始まってしまう予感がする。


 そうだった、ウズベキスタンではどこでもお茶を飲んでいて、電車の中でもセルフサービスでお茶は無料で飲んでいいのだ。


すぐに男性が戻ってきた。手にはティーポットとカップ。


そこからしばらく話が始まった。

名前は「イスファンディオール」さん。
最初は質問攻め。


旅人か? どれくらい居るんだ? どこへ行ってきたんだ?
次にはお互いの仕事の紹介まで。



イスファンディオールさんは、どうやらこの鉄道会社(国鉄)の社員、しかも責任者のようで、私が関心していると職員証まで取り出して見せてくれた。
お正月休みで首都の実家まで帰るようだ。


ざっとお互いの自己紹介が終わると、次には彼の夕飯が始まった。



自宅から持ってきたのか、パックに鶏肉を煮たような料理が入っていて、私にもいくつか差し出してくれた。


しかし。


暖かい車内、薄暗い個室、疲れ。私はその時、強烈に眠かった。話している間も口を動かすのが大変なほどだった。


「ありがとう。でも、私はもう夕飯も済ませて、旅の疲れでとても眠いのです。すぐに寝ます。」


日本流に柔らかく断ったが、ここはウズベキスタン、それは通じなかった。
「いや、食べてくれ。これはウズベキスタンの歓迎で、君はゲストだ。ぜひ、食べてくれ。」


これは困った。


話すのでさえ眠気と疲れに負けそうなのに、食べるとは。


そういえば首都タシケントからサマルカンドへ向かう電車でも、同じ民族同士、皆家族だ、という話を聞いた。


「いや、でも、お腹ももういっぱいで・・・。」


自分でも珍しく感じるほど、断った。それくらい眠かったのだろう。
しかし、彼も引き下がらない。


「いや、おかやん、これは食べてくれ、私からの歓迎なのだ。」
彼は彼で困った表情をする。


うーん、これは仕方ない。頂こう。
「わかりました。ありがとう。では、いただきます。」


お皿に盛られた鶏肉を口に運ぶ。眠すぎて味は覚えていない。ただ、ひとつ、なんとか食べて、後はお皿に置いたままにしてしまった。


私が力尽きたように横になると、彼もしばらくは横になってスマホをいじっていた。


電車の揺れにも慣れ始め、深い眠りに落ちそうな時、体に何もかけずに寝ている私に彼が備え付けの毛布をかけてくれた。


胸の奥で、ありがとう、鶏肉全部食べられずにごめんなさい、と呟いたところで私は完全に眠りに落ちた。


そして、夜中、トイレに行った時のことだ。



おかやんの「とりあえず何でもひとりでやってみる」ブログ。

やりたい事は悩みながらなんでもやってみる。結果的に楽しんでる!また、何かに特化して書いているわけではありません。 書きたいことをごった混ぜにしてネタをブチ混んで書いていますhttps://www.instagram.com/the_unending_world/?hl=ja

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