入ると変人に見られる山 南牧村「碧岩・大岩」

 2016年 7月24日(日) 群馬南牧村 「碧岩・大岩」・三段の滝 


 登山口駐車場  10:30 

三段の滝    11:00 

大岩・碧岩分岐 12:05 

碧岩 直下   12:20 

大岩 直下   13:10 

下山の道に迷う   約15分 

登山口 帰着  15:45 

 登山時間 約5時間15分(休憩含む)


 甘楽郡魔界村、いや正式名称「南牧村(なんもくむら)」の山をできるだけ登ってやろうと、次に選んだのが「碧岩・大岩コース」だった。 

なんもく村、近年日本に返還されたとの噂があるとかないとか、、、いや、ないとかの秘境である。


南牧村のキャンプ場へ行く6キロ手前に管理小屋付きの登山口があり、「三段の滝」というので知られているそうな。

 キャンプ場手前6キロとの立て看板があったが、信号なし、お店なし、沢沿いにひたすら県道を6キロとは南牧村も広い。。。 

ドラマのセットかと勘違いしそうな廃屋。



登山口駐車場。

オレのタイガー戦車以外に他に戦車はなかった。


この山の登山口はここだけ。この時間で車がないってことは、おそらく本日の登山者はオレひとり。。 そうか、、、 この山にオレひとりということになるのか。 


 つまり、    





 ・・・自由だ。



 出発。 


沢沿いというより、沢を何度も横切って渡りS字に登っていく。 前日までの雨できっと普段より水の量もかなり増えているんだろう、流れに埋もれていない岩を探して岩伝いに一歩づつ確認しながら沢を渡る。 時には木製の橋や、新しそうな鉄製の橋やはしごを渡っていく。 


深い森、透き通る沢の水、時折降り注ぐ木漏れ日。 

 ジュラシックパークのような雰囲気だ。 ただ、沢の水の音で周囲の音がまったく聞こえないため、これはクマと遭遇しやすいと判断。クマも人間に気づきにくいはず。 

 が、こんな時に限ってクマ鈴を忘れてしまった。 

 でも、大丈夫だ。 要は、こちらの存在を何かでクマに知らせて、先に気づいてもらい人間を避けてもらえばいいわけだ。 

 その時その場で、オレができる唯一のクマよけ方法。 



 それは大自然の中で、

ひとりカラオケを大熱唱。


 オッケー、助かった。


これで遭遇率はグンと下がるはず。 


 景気づけにラルクの「HONEY」、続いてバンプオブチキンの「天体観測」を大熱唱しテンションを上げ、どこかにいるかもしれないクマに存在を知らせながら、ノリノリで登って行った。


 ・・・誤解しないでほしい。クマよけのための方法である。変人では決してない。


 ただ、心配なのは 


 クマだけでなく、 



 万が一他に登山者がいた場合、

その人たちもオレを避けていくと思われる。


 30分ほどで三段の滝、到着。

 50mあると記載されていた通り、見上げる高さだ。文字通り三段になって下まで水が落下してくる。水量は梅雨のこの時期が一番多いのだろう、落ちてくるというよりドバーッと大放水されているように見える。大自然の偉大さをまさに肌で感じる瞬間だ。


滝つぼに立つと水の落下の風圧が凄まじい。 想像を超える滝の大きさ、襲いかかってくるような水の威力と轟音に、言葉を失うどころか、 



 「 なん・・じゃこりゃあ〜!! 」








 と、つい松田優作のまねをしてしまうのはベタ過ぎたなと後で反省するも その叫び声さえも瞬時に轟音にかき消されていくため、誰かに聞かれなくてよかったと一安心する。 


 吉田沙保里以外の人間の力なんておよばない、あるいは決して作り出せない大自然の中に自分ひとりだけが存在しているのだと感覚で理解してくると、もう「自我をさらけ出して爆発する」心理状態になってくる。 

何故かは分からない。叫びたくなるんだ。それが言葉にならない言葉でも。(言葉になってたが)


 先に続く登山道を探す。

たいていどんな登山道もピンクや赤の目立つリボンが道標として枝にかけられている。 見つけたリボン、つまり登山道は滝のすぐ隣りをS字に登っていた。

そのため、三段の滝の段をひとつひとつ横から眺めることができた。段ごとに滝壺もあって、見上げた時とは別の視点でまた楽しむことができる。

大けがをするが、「キャニオニング」と呼んでしまえば、三段の滝を上からウォータースライダーのように50m滑ることも可能。


滑るというか、


転げ落ちるのかもしれないが。

  (イメージ画像)



この部分だけでも20mはあるのか。滝つぼはプールのようです。



三段の滝を登ってさらに進む。不思議なことに沢がなくなる。


地中を流れているんだろう。そのため水の音がなくなり、耳鳴りがする静けさへと一変した。 が、クマ鈴のないオレは歌い続ける。 歌声が静寂の空気にのって響き渡る。 

斜面を登り続けるのはやはり苦しく、そしてあまりにも静かなので時折、 

「っしゃ、このやろ~!」 

 と猪木のまねをして気合いを入れながら登ってみたり、 

 「クマ・・・、出てこいや~!」 

 と髙田 延彦のまねをして自らを鼓舞してみたりした。

 しかし、クマも出ないし誰からの反応もない。 

 ぼろぼろの分岐案内板を確認しながら、稜線に出て、碧岩へ向かう。


 急に戦争映画を思い出して、何日も飲み食いできず、丸腰のまま敵に襲われるも、なんとか逃げのび、敗走する日本兵さながらの形相で必死に急斜面を登っていく。 


 森を抜け、まもなく山頂か、と思われたその時、目の前に立ちはだかるように現れたのは10mを越える「ほぼ垂直の岩の壁」と「そこから垂れ下がるロープ」だった。


 ・・・。 


 「大尉殿!

 これを上らねばいけんのですか?!」 


 そう言って振り返ってみるが、そこには誰もいない。 

 焦燥感からこぼれた独り言が山頂付近で空に響いていく。


 登山は好きですが、高いところダメです。背後を振り返ってみれば、登ってきた道は急斜面、見上げる先は岩山。落ちたらどこまでも転がっていくだろう。そんな危険なところをロープで垂直に登るなんて無理っす。


 いや、今までも岩山で名高い妙義山の中級コースくらいは鎖とロープで登ってきた。 これは勇気と覚悟の問題だ。 



 「大尉殿、いけますか?」 


 「よし、貴様が先に行け!」 


 「・・・」 


 一人二役を演じてみた。 ちょっとロープにつかまって登りかけてみる。地面から両足が離れた瞬間から、標高800mの眺めといい、まるでビルの30階の壁にぶら下がっているような感覚を覚える。 落ちたら、死ぬな・・・。

 きっとどこまでも転げ落ちて、悲惨な状況になるだろう・・・。

 いったん、下りる。 


 「下りるな! 

    貴様、それでも日本男児か!」 

 「はいっ!」 


 頂上は目と鼻の先だ。この壁さえ登れば・・・。 が、しかし。 万が一落ちたら、、、、絶対に死ぬ。ヘルメットしてないし。大けがで済んだとしても、助けを呼べない。誰もいない。ケータイも不通。 よくニュースである。 ひとりで登山へ出かけたまま行方不明。→ 捜索隊が発見。滑落したと思われる。 ・・・。 それはまずいよ。 

でも、登り切るまで、自分の体重を10数秒程度なら支えるくらいの腕力、握力はある。 ロープは絶対に離すことはない。であれば、いける。登れる。 

 オレは、リュックを下ろした。深呼吸をする。 

 「エイシャコラッー!」 

 気合いをいれ、ロープをつかみ、足を岩にかけ、一気によじ登った。 数秒後、ロープが巻き付けられた巨木までたどり着く。 

 やった、これで頂上にいけ・・・、  


 視線を上げると、また次のロープが垂れ下がっているではないか。 そして今登ってきた岩壁よりさらに高く、さらに角度のある岩壁が目の前にそびえているではないか。

 いったんは足をかけた。が、やはりその恐さには勝てなかった。 


「大尉殿、

    無理です。

        これは無理です!」 


 「よし、お前はよくやった!」 

「胸張って国へ帰りましょう、大尉殿!」

一人二役も板についてきた。 

 

このロープが絶対に切れないとは言えない。どこかの岩が崩れないとも言えない。 何かあったら助けを呼べない。ここは無事に下山することが一番だ・・・。 

景色は山頂より数メートル下だが、十分絶景を見られた。 




よし、この「碧岩」登頂はあきらめよう。勇気ある決断とも言えた。 

皮肉にも崖の上に見たこともないような白い綺麗な花が咲いている。ユリの花かな。 これが高嶺の花ってやつか。ホントに手が届かない。



 隣にそびえる「大岩」の山頂を目指すことにした。

 来た登山道を引き返し、大岩方向へと分岐を曲がり、きつくなってくる斜面を両手両足で登る。

森を抜け、岩だけの場所に出る。おそらく「大岩」山頂と思われる先端が10数メートル先に見えた。そこまで30分以上、まるで密林の戦場を逃げ惑う兵士のように息を切らしながら無我夢中で登ってきた。

 が、しぁかし! 

 山頂までの道、傾斜こそ緩やかであるが、両端が切れ落ちた断崖となっている。

つかまるロープもない。 さらには崖の底が見えないほど、深い。 

 笑いがこみ上げてくる。 無理だ。 そこで完全に集中力が切れ、あきらめがついた。 

ここでお昼を食べ、無事下山しよう。 眺望は十分素晴らしかった。

そして男は、遠くを見つめた。

まるで自らの過去を反芻するように。


 先ほどいた「碧岩」がすぐ向こうに見えた。 あんなところ、よく登ろうとしたな、とは思うが向こうから見たら今いる場所もとんでもない崖っぷちなんだろう。


 絶景を見ながらの弁当。 至福の時だった。 



 下山時、初めて山で迷った。 気づいたら、登山道ではない場所を下っている。 


 どこだ、ここ。 そもそもこの山、登山道が「道」を成していない。道標のリボンや立て看板で、「ある程度の方向」を頼りに登ってきた。 最後の立て看板は、50mほど手前にあった。方向は確認したつもりだった。 いったん、戻るか。いや、この方向で合っている。という行動と思考をくり返したが、やはり心配になり、立て看板までまた息を切らしてよじ登る。 

 こっちが、大岩でこっちが碧岩だよな。で、こっちから来たんだよな。

 ・・・来たような気がする。

あれ、こっちか? 

 森の中、どちらを見ても同じ景色にしか見えない。分かるのは太陽の位置、東西南北と山頂方面と下山方面というおおまかな方向のみ。 

 こっちでいいんだよな。改めて確認して下りていく。 あれ? こっちは碧岩方面だな。こっちじゃないか? あれ? あれ? 

 キョロキョロしても無駄だが、キョロキョロするしかない。

 もういちどダッシュで立て看板に戻る。 ようやく気づいたが、この看板、T字路なのに2方向しか示していなかった。下山方面の矢印がない。登ってきた時は、次の方向が左か右かさえ分かれば良かったが、先ほど通った時に、そのままスルーしつつ、登山道っぽい場所をそのまま下がってきてしまったようだ。 

あぶねえ・・・。 

そういえばこんな分岐が他にもあった。道っぽいのに、たまたま枯れ葉がなかっただけだったり、木々が生えていなかったりするだけ。実に間違えやすい。 

 そのまま下山時も、クマよけのためにカラオケ大会をしながら歩く。 山の谷間を歩いているので、声もよく響き渡っていた。

 よって、人間も近寄ってくることはなかった。 結果、5時間以上かかった登山となった。雨の影響での足場のわるさ、倒木、急斜面、岩山などその要因はいくつかあった。

 帰りに

「道の駅 オアシスなんもく」

に立ち寄る。


腹の出たオッサンたちツーリングで大勢来ている。川辺で遊んでいる家族の姿も見える。 

まだまだ南牧村、見所満載でアツいです。  

おかやんの「とりあえず何でもひとりでやってみる」ブログ。

やりたい事は悩みながらなんでもやってみる。結果的に楽しんでる!また、何かに特化して書いているわけではありません。 書きたいことをごった混ぜにしてネタをブチ混んで書いていますhttps://www.instagram.com/the_unending_world/?hl=ja

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