2025.03.31 04:59新世界紀行 エジプトの旅27 奇妙な冒険ルクソール神殿の門をくぐると、ぼくは静かな畏れを抱いた。エジプトの遺跡をいくつも巡ってきたが、この神殿はまた別格だった。天井はなく、空へ向かって聳え立つ巨大な支柱の群れが、ぼくを迎え入れる。ファラオの石像が並び、悠久の時間を超えて訪れる者を見下ろしている。
2025.03.26 06:26新世界紀行 エジプトの旅26 夜のルクソール神殿ルクソール神殿前で何か大晦日のイベントをやっていると女子3人組から聞いていたため、向かってみることにした。巨大なナイル川に沿って歩いていると、ライトアップしている巨大な遺跡が見えてきた。
2025.03.21 23:12新世界紀行 エジプトの旅25 ルクソール博物館わずか5分程度だったろうか、ナイル川を渡るオンボロの公共フェリーに降り、宿のある東岸へ戻ってきた。戻って来たとはいえ、昨夜ルクソールに着いたばかりのぼくは行く先の全てが初めての場所。地図を見て現在地を把握はしているものの、さてどうしようかと考えてはいた。当初の計画なら、今日はお昼過ぎには東岸に戻って来て、ルクソール神殿、そしてルクソール博物館へ行こうと思っていたが馬車が思ったより遅くて予定が大幅に変わってしまっていたのだ。ただ、予想外にフェリーに乗って帰って来たことで、嬉しい誤算があった。予定入れていた「ルクソール博物館」がフェリー乗り場の目の前にあるのだ。残された時間的にはもう行くのを諦めていたルクソール博物館。昼間は午前9時〜14時の開館。そして、...
2025.03.16 09:18新世界紀行エジプトの旅24 さよなら馬車 王家の谷から駐車場へ戻ると、バスでもなく、車でもなく、一台の馬車が待っていた。馬の手綱を握るのは男と、その傍らに立つ幼き息子。「楽しめたか?」 運転手は、馬の腹部を撫でながら言った。 ぼくは言葉少なに頷く。感動を英語で伝えようとするも、適切な表現が見つからない。しかし、Sさんは饒舌だった。細部にまで言及し、異国の情景を言葉に変えてゆく。「それは良かった。馬も少し休めたようだ。」 馬は巨体を揺らし、鼻を鳴らして応えた。 次なる目的地は「ハトシェプスト女王葬祭殿」。王家の谷の絶壁を隔て、その真裏に位置する遺跡である。ぼくらの乗る馬車は、来た道を半円を描くように戻る。 一箇所目の観光を終えた今、ようやくぼくらは馬車の親子に対し、信頼というものを抱きはじめて...
2025.03.03 14:59新世界紀行エジプトの旅23 王家の谷 馬車に乗るのは、考えてみれば初めてだった。 いや、もしかすると幼い頃、榛名湖の観光馬車に乗ったことがあったかもしれない。だが記憶にはないし、そもそもケチな親父が「ただ乗るだけの経験」に金を払ったとも思えない。 大人になってから、沖縄の石垣島で観光用の牛車に乗ったことはある。あれも結局は「観光」であって、移動のためのものではなかった。スピードも遅く、ただ揺られているだけだった。 しかし今、ぼくは違った。ナイル川を渡るための手段として、馬車に乗っていた。観光客向けの馬車には違いないが、それを本当に足として使う人間がどれほどいるのか。 幸い、風はなく、暑くも寒くもない。馬車日和だった。 最初の目的地は「王家の谷」。エジプトに来た旅人が必ず訪れる、ツタンカー...